「複文構文の意味の研究」(略称「複文構文」)
現代日本語のタリは,「買物をしたり,映画を見たりした」というように,節と節を並列的に連結する。本発表では,発話解釈におけるタリの機能を分析し,この表現にコード化されている意味を明らかにする。また,タリの使用に伴われる語用論的効果が,本発表で提案するタリの意味とどのように関連づけられるのかについても考察を試みる。
本発表では,カラ節とケド節のいわゆる言いさし現象を取り上げ,日常会話データを用いた会話分析的手法により,言いさし発話が果たす様々な相互行為上の働きを考察する。そして,そのような相互行為上の働きは,言語使用者がケドやカラといったマーカーに備わる意味を資源として利用した結果,創発したものであることを示す。
自発的な話し言葉では,連用節が多重に連なることにより,長大な発話が形成されることがある。これは,述語の活用形や接続助詞によって発話を継続することができる日本語の話し言葉の特徴である。本発表では,自発的な話し言葉においてどのような形式の連用節がどのような組み合わせで用いられているのか,その実態を自発音声コーパスを用いて分析する。
連体修飾では「濡れている傘」と「濡れた傘」のようにテイル形とタ形が意味的に中和したように見える現象が観察されるが,これが節としての成立度・特性「節性(clausehood)」の違いであることを論じる。また,日本語の文法化が連体修飾成分と名詞を中心に生じることで複文が単文化する「節減少」「非節化」について論じる。
本発表では,益岡隆志(1997)において論じられている複文の諸特徴を出発点として,複文の情報構造を論じる。特に,埋め込み文や副詞節に助詞が任意に生じることにより生み出される新しい意味効果に焦点を当て,それらの現象を経済性や局所性の観点から考察する。
本発表では,ある行為の直後という意味を持つ「~たばかりだ」と「~たところだ」の違いについて,前接する動詞,時間副詞の共起という点からコーパスを用いた分析を行う。また,「~たばかりに」(悪い結果),「~たところ」(順接),「~たところが」(逆接),「~たところで」(区切り,逆接,仮定)などの接続表現の用法と文末用法との違いについても,コーパスを用いて分析する。
現代標準中国語において,“着-zhe”は一般に継続相に相当するアスペクト形式として捉えられる。しかしながら,用例の中には,アスペクト的な意味合いに乏しく,単に動詞句を別の動詞句に依存させる働きのみを有するような“着”が存在する。本発表では,このような“着”を仮に接続形式と捉え,いわゆる文終止問題をはらむ“了”との対立関係,及び“着”のその他様々な用法における位置づけについて考察する。
スワヒリ語とヘレロ語を例にバントゥ諸語における名詞修飾節の形式と意味関係について報告する。バントゥ諸語において名詞修飾節は,格関係にある名詞だけでなく,内容補充関係や因果関係などかなり広い範囲の名詞を主名詞にすることができる。ただし,語順の制限や形式の使い分け等には言語による違いが見られる。また,いずれの言語においても,内容補充関係にある名詞を修飾する形式には動詞補文との連続性が見られる。
これまでの文法研究では,条件表現とモダリティ表現は別々に扱われ,両者の関係について明らかでない。本発表では,文法史の視点から,両者の接点について考える。今回は,中古の和文資料を用いて,仮定条件表現(「未然形+バ」節)とモダリティ形式「ム」による表現との連続性を見ていく。仮定条件表現の成立過程についても考えてみたい。
複合辞表現には,接続関係を表示して複文を構成するものが多い。複数の助詞から成る複合接続助詞,動詞出自形式として副詞節を構成するもの,連体修飾構造の底名詞でありつつ主節に対しては接続成分として機能するもの等,タイプは様々だが,本発表では,単文・複文の連続性も考慮しながら,諸表現の意味・機能の特徴の一端を述べてみたい。