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「近現代日本語における新語・新用法の研究」

プロジェクト名

近現代日本語における新語・新用法の研究(略称:新語・新用法研究)

リーダー名

新野直哉(所属:時空間変異研究系 職:准教授)

開催日時

平成23年9月18日 13:30~18:00

開催場所

花園大学拈花館1階博物館実習室

発表テーマ・発表者氏名と概要

① 新野直哉(国立国語研究所准教授)
「昭和10年代の国語学・国語教育・日本語教育専門誌に見られる言語規範意識」

近過去の新語・新用法については,文献における用例を調査して分析・考察するという手法で研究が進められてきた。しかし,そのような事象に関する当時の言語(規範)意識については,あまり注目されてこなかった。この問題について,これまでほとんど利用されてこなかった,昭和10年代(1935~1944)の国語学・国語教育・日本語教育の専門誌を資料として考察した。

その結果,これらの資料は,当時の「旬の新用法」(代表的な例としては,“とても”が「とても大きい」のように程度強調で使われること)に対する言語(規範)意識がリアルタイムで記されている,貴重な資料であることがわかった。

近現代の新語・新用法そのものの研究に加え,それに対する言語(規範)意識の研究の重要性をも主張するとともに,いずれの研究においても,これらの専門誌を,もっと活用すべきであると提言したい。

② 島田泰子(二松学舎大学教授)
「全量性副詞と否定(的表現)との結び付き傾向について」

“一向”“皆目”“皆式”など「全面的に,ある状態である」ことを意味する副詞は,“ない”等と呼応して全面否定の表現に用いられる傾向が強い。「否定表現と呼応させる用言が本来である」との規範意識が定着していない,“全然”以外の語においても,この傾向は顕著である。否定表現との呼応傾向を、他の類似の語を含めた広い範囲での一般的な現象として捉え,本質的な問題として考察することはできないか。これらの副詞を用いた表現における肯定・否定のありようを観察し,同様の性格を持つ“全然”の語に対する規範意識との関連を探った。

また,これらの語の用法を分析・記述する際,しばしば「否定的な意味」のような言い方がなされ,そのような観点が導入されるが,文法上の「否定」(打ち消し)と,意味上の(特に評価的な価値判断においての)「否定(的)」とは,どのように関連する(または,しない)ものであるのか。実際の用法の上で前者が目立つことと後者が目立つことには、どのような関連と違いかあるのか。それらの問題についても考察を試みた。

③ 余田弘実(京都西山短期大学特任准教授)
「近世から近代の”いためる”について-料理書を資料にして-」

“いためる”という加熱調理操作を表す語は,近世の料理書では1800年代に見られるようになったが,同じ加熱操作について,当時は“(油にて)いる”も使われていた。では,近代以降,現代まで,”いためる”はいつ頃,日本語の語彙体系に定着したのか。本発表では,近世の料理書における”いためる”と”いる”の用例を分類し,近世に”いためる”という加熱調理操作が受け入れられていく過程を示した。その事実を背景に,中華料理や西洋料理のような新しい料理が普及しつつあった近代について,『西洋料理通』(明治5年),『家政讀本』(明治21年),『通信教授女子家政學後編』(明治22年),『食道楽』(明治36~37年)の”いためる”と”いる”の用例について検討した。その結果,近代初期では近世の終わりと同様,”いためる”という加熱操作は行われていたが,調査の範囲では”いためる”という語は使われておらず,”(油にて)いる”が使われていた。しかし,明治も後半の『食道楽』では,現在と同様に”いためる”という語が使われていることがわかった。

今後は,語彙体系における,新語の定着とはどのようなことなのか,また,新資料の開拓等の課題が残った。