「対照言語学の観点から見た日本語の音声と文法」研究発表会

プロジェクト名・リーダー名
対照言語学の観点から見た日本語の音声と文法
窪薗 晴夫 (国立国語研究所 理論・対照研究領域 教授)
班名・リーダー名
文法研究班 「名詞修飾表現」
プラシャント・パルデシ (国立国語研究所 理論・対照研究領域 教授)
開催期日
平成29年10月29日 (日) 10:00~17:00
開催場所
富山大学 人文学部大会議室 (1F) 五福キャンパス (富山市五福3190番地)
アクセス

どなたでも参加可能ですが,参加人数を確認するため,事前に a-ueki[at]ninjal.ac.jp 宛にお申し込みください。 ([at]を@に変えてください。)

文法研究班 「名詞修飾表現」 平成29年度 第2回研究発表会

9:30~10:00 受付

10:00~11:00 「ブルシャスキー語の名詞修飾と名詞化」 吉岡 乾 (国立民族学博物館)

ブルシャスキー語の名詞を修飾する表現としては,属格名詞類によるもの,形容詞類によるものと,動詞由来のものとがある。動詞由来の名詞修飾表現は,非定形動詞 (不定詞,完了分詞) を用いるものと,定形動詞 (と疑問詞) を用いるものとの2種類があり,それぞれがカバーする範囲が若干異なっている。一方で,非定形動詞には,名詞修飾ができない脱動名詞もあるし,(これまで名詞化などとは言われていない) 接辞によって形容詞類が非帰属的になる名詞化もある。本発表では,その辺りを見比べて各々の特徴をできるだけ明確化する。

11:00~12:00 「アルメニア語と日本語の名詞修飾表現の対照 ―「外の関係」の名詞修飾表現を中心に―」 クロヤン・ルイザ (名古屋大学),堀江 薫 (名古屋大学)

アルメニア語の「名詞修飾表現」は構文上,定形節,分詞句 (結果分詞,仮定分詞,未来分詞Ⅱ,不定詞),相関節の3種類に分けられ,意味上限定的・非限定的 (Restrictive・Non-restrictive) 関係節に分けられる。
日本語の「内の関係」の名詞修飾表現に関しては,アルメニア語では定形節,または,分詞句 (上述した分詞すべて) が用いられ,これらはほとんどの場合は置き換え可能である。ただし,日本語の連体形動詞の「テイル」形がアルメニア語の仮定分詞に対応している一部の表現に関しては,分詞句の使用範囲に制限が見られる。
日本語の「外の関係」の名詞修飾表現のうち,「短絡型」タイプ以外の,「内容補充的」・「相対補充的」連体修飾表現に関しては,アルメニア語では,定形節または分詞句が用いられる。ただし,「内容補充的」名詞修飾表現に関しては,アルメニア語では定形節のみが可能な場合と分詞句のみが可能な場合があり,両者の相違は様々な制約によっている。また,「相対補充的」名詞修飾表現に関しては,アルメニア語では分詞句の方が定形節より広範囲の対応関係を見せる。

13:30~14:30 「スィンディー語における名詞修飾の実際」 萬宮 健策 (東京外国語大学)

スィンディー語で名詞 (名詞句,名詞相当語等) を修飾する場合,動詞未完了分詞および完了分詞の派生形を用いたり,waaro,-haaru という接辞を用いたりと,多様な形式を用いることができる。また,上記未完了分詞,完了分詞は,そのまま名詞相当語としての機能も有する。
本発表では,スィンディー語で名詞として機能するもの,およびそれらの語彙がどのように修飾されうるのかを例示し,特に周辺の現代インド・イラン諸語との比較のためのデータ提供を試みる。

14:30~15:30 「タイ語の名詞修飾要素の分類:名詞修飾の機能体系に関する一考察」 高橋 清子 (神田外語大学)

本発表の目的は以下の2点である。第一に,タイ語ではどのような要素が名詞を修飾できるのか,名詞修飾要素の分類を提示しながら,概観する。第二に,タイ語の名詞修飾表現を具体例として,名詞修飾表現はどう体系化され得るのか,特に名詞修飾要素の機能の違いに注目し,考察する。

16:00~17:00 「ヒンディー語における名詞句と「形容詞」の再考 ―インド伝統文法と体言化理論融合の試み―」 西岡 美樹 (大阪大学)

ヒンディー語の名詞修飾には,関係節,同格節,分詞 (連体修飾型) ,属格後置詞 ‘kā’, ‘vālā’ (準体助詞的機能も含む多機能接辞または語) 以外にも,他の言語と同様,形容詞もしくは名詞が修飾する名詞句がある。さらに名詞や動詞に接辞を加えることで,様々な派生語を生み出す。
本発表では,まずヒンディー語の伝統文法 (サンスクリット語文法の流れをくむインド伝統文法) を踏まえ,形容詞を使用したサンスクリット語やヒンディー語の名詞句の例を紹介し,この「形容詞」と訳されている文法用語 ‘viśeṣaṇa’ の本質とラベル付けの妥当性について議論する。次に,インド伝統文法の派生語 (yaugika śabda,原義は「結合語」) を作る際の接辞 (pratyaya) と,二語から成る複合語 (samāsa) を概観し,これらがShibatani (2014他) の体言化理論内でどのように位置付けられるか,さらに接辞 ‘vālā’ の機能拡張の可能性についても検討する。