所長メッセージ

国語研がめざすもの

所長 影山 太郎

国立国語研究所 (国語研; 英語名称 National Institute for Japanese Language and Linguistics,略称 NINJAL) は,大学共同利用機関法人 人間文化研究機構の一員として,言語研究の観点から人間及び人間の文化の解明に寄与することを目的とした日本語学・言語学・日本語教育研究の研究所です。

大学共同利用機関というのは,個別の大学では維持が困難な大規模な研究設備や膨大な研究情報・資料を国内外の研究者に提供するという「共同利用」機能と,それらの設備や資料を用いて先導的な研究を国内外の大学・研究機関と連携して実施するという「共同研究」機能の2機能を高度に融合させることにより,我が国の学術研究の発展に重要な貢献を行うという使命を持った,日本独自の研究組織です。この使命に沿って,国語研では,現代語と古典語,標準語と方言,書き言葉と話し言葉など日本語の多種多様な言語資源 (コーパス,データベース) を構築し,大学・研究者コミュニティ・一般社会に幅広く提供するとともに,それを活用した大規模な共同研究を全国的・国際的に推進しています。

言語は,社会における人と人とのコミュニケーションの手段としての働きと,思考・論理・認知・創造性など人間の知的活動の基盤としての働きを兼ね備えた,ヒト (人類) のみに与えられた素晴らしい資質です。この素晴らしい資質を解明するため,国語研はウチ (日本語使用者) の観点とソト (諸外国語との比較) の観点を合わせた複合的観点をとり,日本語内部の多様性と変容,並びに世界諸言語から見た日本語の特質と普遍性を総合的に明らかにしようとしています。また,国語研の研究範囲は日本語だけに狭く限定されるわけではありません。2009年のユネスコ報告で消滅危機の状態にあることが指摘された琉球諸語・方言とアイヌ語も重要な研究対象で,それらの研究を通じてそれぞれの地域社会を活性化しようとしています。さらに,外国人 (非母語話者) の日本語習得における諸問題をソトの観点とウチの観点の接触から生じるものと位置づけ,言語習得の基礎研究を通して日本語教育の分野にも学術的貢献を行っています。

このように多角的・総合的な観点から日本語を研究するためには,国際的な取り組みと,既存の枠にとらわれない若手研究者の育成が欠かせません。前者については,海外から研究者を積極的に受け入れるだけでなく,研究成果の国際的発信にも重点を置いて取り組んでいます。また後者に関しては,一橋大学及び東京外国語大学との連携大学院で大学院生の教育を行うとともに,研究所内部の若手研究者育成制度 (PDフェロー) により,実践的で国際感覚をもった研究者を育てています。

グローバル化が進む今日の世界において,環境問題や異文化対立などの諸問題が激化しています。それらの幾つかは,言語が持つ2つの機能―すなわち,コミュニケーション機能と思考・認知機能―の研究を関連諸分野との学際的連携によって深化させ,研究成果を社会に応用することで解決の糸口が見出されるのではないかと考えられます。言語の研究は,決して,漢字や言葉遣いの調査に留まりません。諸学問の基盤として社会の多方面に役立つ可能性と発展性を秘めているのです。

2016年4月から第3期中期目標・中期計画期間 (6年間) が始まり,教職員一同,新たな目標に向かって邁進しています。豊かな日本語の姿を将来に継承していくため,今後ともみなさまからのご支援とご助言をお願いする次第です。

国立国語研究所 所長 影山太郎