暮らしに生きることば

「時分どき」

研究所では,全国各地にでかけ,暮らしの中のことばを録音して研究に活用しています。

以下の会話は京都市中京区のKさん宅でインタビュー調査した時の一コマです。Kさんは大正2年京都生まれの女性です。

所 員 「じぶんどき」っていうことばはどういう意味ですか?
Kさん 「時分どき」って,食事の時分どきってことですよね。
所 員 食事の時間?
Kさん 時間ですね。お昼とか,夕方とかね。
所 員 それはどんなふうに使うことばなんですか?
Kさん そうですねぇ。お昼に差しかかってくるとね,それ言うて,みー(身)引くのが,エチケットどすわな。
所 員 なるほど。
Kさん そやなかったら,いつまででも座ってたら,お膳(ぜん)出さんならんことになりますしね。(笑い)
所 員 そういうときに「時分どき」ってことばを……。
Kさん そうどすな。「もう,時分どきやから,これで失礼さしていただきます」言うて帰らはります。
所 員 お客さんの方が言うことばですか?
Kさん ま,その時に,どうしても寄せてもらわんならん時やったら,「ご時分どきにすんまへん」とか言うて……。

この会話では,よその家を訪問した時の心配りが話題になっています。客の側では食事どきを避ける,また迎える側でも食事のもてなしを気にかける,そのような心配りが,「時分どき」ということばに込められています。