「具体的な状況設定」から出発する日本語ライティング教材の開発

プロジェクトリーダー
小林 ミナ (早稲田大学)

概要

研究目的

日本語教育におけるこれまでのライティング教材は,初級レベルでは「既習の文型や語彙を定着させる」ための作文教材が多く,「日本語学習者が実際に書く / 打つ状況」を視野に入れたものはほとんど見られません。中級レベル以上では,学術論文やビジネスメールなどが扱われるようになりますが,そこでの学習項目は,教材作成者や日本語教師によって経験的に設定されたものであり,日本語学習者が書く / 打つ際に,どのような困難を覚え,どのような支援を必要としているかという実態を踏まえたものではありません。

現実のコミュニケーションにおけるライティング場面は,IT技術・通信技術の発達などにより,「手で書く」から「キーボードやタッチパネルで打つ」に変わってきました。また,Google 翻訳に代表される機械翻訳,多言語対応のウェブ辞書の急速な発達などにより,頭の中の知識だけに頼ってゼロから書く / 打つのではなく,多様な言語リソースを有効に活用しながら書く / 打つ時代に移行しています。さらに,LINE や Facebook Messenger といった SNS 技術の拡大は,「話す」代わりの手段としての新たなテキスト・コミュニケーションを創出しました。これからのライティング教材は,このような現状を踏まえてデザインされるべきであると考えます。

以上の問題意識を踏まえ,本研究では「「具体的な状況設定」から出発する,日本語学習のためのライティング教材の開発」を目的とします。「状況設定」「必要なスキル」「日本語学習者が抱える困難点」に関する3つの実態調査の成果を踏まえたライティング教材を作成することにより,現行教材が抱える問題点を克服することを目指します。

研究計画・方法

本研究では,現実のコミュニケーションにおいて,日本語学習者が自力で書ける / 打てるようになるためのライティング教材を開発します。本研究で開発する「教材」とは,教室での対面授業を前提にした紙媒体の教科書ではなく,インターネットに接続できる環境があれば,どこでもいつでも自力で学習可能なウェブ教材です。

そのようなウェブ教材を開発するための基礎研究として,「現実のコミュニケーションにおいて,国内外の日本語学習者が何かを書く / 打つ状況」「そこで必要とされる言語,非言語のスキル」「書く / 打つ際に学習者が抱える困難点」に関する3つの実態調査を行ない,そこで得られたデータを分析することにより,「具体的な状況設定」「学習するべきスキル」を抽出します。その成果に基づき,「そこで書ける / 打てるようになるために必要な練習」の形式や内容を考察します。