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文字環境のモデル化と社会言語科学への応用

略称文字と社会言語学
プロジェクトリーダー横山 詔一(よこやま しょういち)
国立国語研究所 理論・構造研究系教授
研究分野日本語学・認知科学・統計科学
キーワード文字,言語生活,学習・記憶・思考,行動計量分析
プロジェクトのHPhttp://www2.ninjal.ac.jp/keinen/

概要

パソコンや携帯電話で文字を打つとき,私たちは「桧-檜-ヒノキ-ひのき」のような変換候補から1つの表記を瞬間的に選択している。では,どの文字表記が選択されやすいのかを,確率理論などで数量的に予測することは可能なのだろうか。このような問題意識のもと,日本語の文字表記について,日本語学の知見に加えて,認知科学,計量経済学などの優れた発想・理論も参照しながら研究を展開し,文字環境(文字レキシコンを含む)の質的・量的モデルを作成する。 また,この文字環境モデルは,敬語の経年変化や,地域社会で進行中の共通語化などの研究にも応用できる。とりわけ,愛知県岡崎市の敬語研究や,山形県鶴岡市の共通語化研究については,統計数理研究所や研究情報資料センターと連携しながら検討を行い,言語変化理論の統計的検証を目指したデータ整備を進めて,社会言語科学や計量言語学の発展に寄与する。その成果は,言語習得研究のほか,脳科学や老年学研究にも新たな地平を拓く可能性があり,既存の分野の枠を超えた学際領域の創出につながるものと期待される。 (なお,本研究は学問領域の創成又は既存の分野の枠に収まらない学際領域を融合することを目指している。)

共同研究者(所属)

井上史雄(明海大学),小川孔輔(法政大学),尾崎幸謙(統計数理研究所),尾崎喜光(ノートルダム清心女子大学),佐藤和之(弘前大学),ジョセフ・ケス(ヴィクトリア大学),中村隆(統計数理研究所),野崎浩成(愛知教育大学),前田忠彦(統計数理研究所),水野義道(京都工芸繊維大学),森篤嗣(帝塚山大学),ユウコ・ゴトウ・バトラー(ペンシルベニア大学),吉野諒三(統計数理研究所),Galina Vorobeva(キルギス国立民族大学),佐藤亮一(国立国語研究所名誉所員),米田正人(国立国語研究所名誉所員),朝日祥之(国立国語研究所),井上文子(国立国語研究所),高田智和(国立国語研究所),野山広(国立国語研究所),Eric Long (国立国語研究所),阿部貴人(国立国語研究所・統計数理研究所客員准教授),間淵洋子(元国立国語研究所・プロジェクト特別研究員)

研究目的

日本語の文字表記について,文字環境(文字レキシコンを含む)のモデルを理論・構造研究系を中心に作成する。そのモデルは,日本人どうしの文字コミュニケーションに関する研究のほか,日本語学習者の漢字習得研究にも新たな理論的基盤を提供するものと期待される。

また,本プロジェクトが提唱する文字環境モデルは,音声コミュニケーションに関する研究にも利用できる。具体的には,山形県鶴岡市で1950年から約20年間隔で3回行われた共通語化の縦断調査や,愛知県岡崎市で1951年から実施されてきた敬語の経年調査などの大規模データベースを活用しながら,時空間変異研究系と連携して言語変化の新たな理論を導出する。とりわけ,山形県鶴岡市の共通語化研究については,統計数理研究所のプロジェクトと連動しながらデータ整理を進め,言語変化理論の検証に必要な統計解析を可能にするための基盤を整備する。 さらに,米国シアトル市で1956年から7年間隔で継続されている「知能の生涯変化」に関する大規模な縦断研究との比較もおこない,言語習得研究や老人学研究にも貢献できる言語変化研究の方法論を確立する。このような学術的挑戦は,単に文字論だけではなく,社会言語科学や計量言語学にも新たな発展をもたらし,既存の分野の枠を超えた学際領域の創出につながる。

研究計画・方法

本プロジェクトの射程は現代の共時的研究におく。そして,「文字環境研究班」と「共通語化研究班」の2つを組織してプロジェクトを円滑に遂行する。

文字環境研究班:文字環境のモデル化をおこなう

井上氏と高田氏と横山は,看板,新聞・雑誌,市販辞書,JIS漢字規格などの物的文字環境が,心内辞書(mental lexicon)等の心的文字環境に及ぼす影響について検討する。すでに各人が学術論文等で公刊している質的モデルと量的モデルの両者をさらに理論的に深く追究する。ここでの量的モデルは,ある文字刺激に接触した経験が,その後の行動や認知にいかなる影響を及ぼすかを説明するための多変量解析モデルである。

共通語化研究班:社会言語科学への応用を実現する

このプロジェクトでは,上記の文字環境モデルや言語変化のS字カーブ理論などを土台として,記憶・思考研究の発想を付加した新たな理論について検討し,国立国語研究所が1950年から半世紀以上にわたって蓄積してきた社会言語学的な縦断調査データの解析に応用を試みてきた。2011年度は,その理論から導出された予測を検証するため,統計数理研究所・調査科学センターと連携して山形県鶴岡市で共通語化に関する大規模な調査を試みる。これは1950年,1971年,1991年とこれまで約20年間隔で3回にわたって当研究所と統計数理研究所が連携しながら実施してきた調査の第4回目になる。この調査が成功すれば,世界でもっとも長い期間を横断的・縦断的に追跡したデータが得られ,統計科学,脳科学,老年学などの諸分野にも貢献が期待できる。

共同研究発表会

開催日時 開催場所 開催案内 開催概要
平成24年6月2日(15:00-18:00) 国立国語研究所
平成23年8月28日(9:30-11:35) 鶴岡市立図書館
平成23年7月2日(14:00~17:00)
平成23年7月3日(10:00~12:00)
津田ホール
平成22年9月6日(10:30-15:00) 関西学院大学梅田キャンパス
平成22年8月27日(16:00-18:30) 弘前大学人文学部
平成22年3月29日(13:30-18:30) 国立国語研究所
平成21年11月27日(15:00-18:00) 国立国語研究所