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大規模方言データの多角的分析

略称大規模方言データ
プロジェクトリーダー熊谷 康雄(くまがい やすお)
(国立国語研究所 時空間変異研究系 准教授)
研究分野日本語学,方言学
キーワード言語資料,言語地図,方言談話

概要

様々な研究分野において,研究の基盤となる情報の電子化,データベース化は重要なものとして推進されている。方言研究においても,国立国語研究所では日本全国の方言の地理的分布が見渡せる『日本言語地図』や方言による自然な談話を全国規模で収集した録音資料「各地方言収集緊急調査」などの全国レベルの大規模で重要な方言研究資料の電子化・データベース化を進めてきた。電子データとなった資料には様々な可能性が期待されるが,我が国の方言研究において,大規模なデータを本格的に駆使した研究は,いまだ今後に期待するところが大きい。本研究は,計量的方言研究,言語地理学,日本語史,談話研究など専門を異にする研究者の共同研究により,全国規模の言語地図や方言談話資料などの大規模方言データの可能性を多角的に掘り起こし,方言の分布や形成,方言談話に見られる地域差などに関わる新たな知見の獲得や研究方法の開発などを目指す。また,このようなデータを用いた研究の進展,データベースの整備・公開によって,研究教育上の方言研究資料,データベースの利用の活性化を促すことも期待される。

共同研究者(所属)

沖裕子(信州大学),小林隆(東北大学),沢木幹栄(信州大学),高橋顕志(群馬県立女子大学),日高水穂(関西大学),大西拓一郎(国立国語研究所),井上文子(国立国語研究所),三井はるみ(国立国語研究所)

研究目的

国立国語研究所では,日本の方言研究の基盤的な資料である『日本言語地図』(調査期間1957~1965,調査地点数2,400,調査項目数285)や「各地方言収集緊急調査」(調査期間1977~1985,全国約200地点)の資料等の電子化・データベース化を進めてきた。これらは全国レベルの大規模な方言研究の資料であり,日本の方言研究における重要な資料である。本研究では,これらの資料・データや,既に電子データが公開されている『方言文法全国地図』等の利用も視野に入れ,計量的方言研究,言語地理学,日本語史,談話研究など専門を異にする共同研究者が,これらの大規模方言データを本格的に共同利用し,複数の視点から多角的に研究を実施する。大規模方言データの持つ可能性を十分に引き出す多角的な研究を通して,ことばの地域差の実態やその形成の解明に寄与する新たな知見の獲得,研究方法の開発,資料・データの整備・共有,公開や利用法の蓄積などを行う。

研究計画・方法

『日本言語地図』(LAJ)はもともと印刷物であり,資料の全体的な取り扱いは容易ではなかった。『日本言語地図』データベース(LAJDB)は,言語地図のデータと調査の回答を記録した手書きの原カードの画像からなるデータベースで,LAJの利用環境を飛躍的に向上させる。このLAJDBを活用して,方言の分布の詳細な姿や,分布の形成,歴史などを明らかにしていく。具体的には,計量的な手法を用いた方言の分布パターン・類型,方言区画や伝播の模様などの詳細な解明,文献学的な方法による語の成立時期を付加したデータを用いた語の分布と歴史の研究,藩領図や近代道路図(LAJ参考図)などの言語外的な情報のデータ化と語の分布との関係の分析などをはじめとして,LAJDBを活用した研究を進める。なお,LAJDBは,54万枚と推定される原カードのほぼ9割(2009.9時点)が入力済。整備を進め,項目毎の点検校閲後,順次公開する。

「各地方言収集緊急調査」資料は,各県1地点については,『全国方言談話データベース』として刊行済で,さらに全体の1/3の資料の音声ファイルができている。他の電子化した談話資料も視野に,全国的な規模の方言談話資料のデータベースを活用した研究を進める。具体的には,表現法の使用実態と機能に焦点を当てた研究,終助詞などの表現法や談話におけるオノマトペの現れ方などの地域差の分析,談話資料と言語地図の情報を対比した分析などをはじめとして,談話における地域差を明らかにする研究を行う。

メンバーの構成と役割分担

  • 熊谷康雄(国立国語研究所):言語地図の計量的な分析,研究法の開発
  • 井上文子(国立国語研究所):全国規模の談話資料を利用した表現法の地域差の研究
  • 大西拓一郎(国立国語研究所):言語地図にGISを応用した研究
  • 三井はるみ(国立国語研究所):方言談話資料による地域差の分析
  • 小林隆(東北大学):言語地図と文献による総合的な日本語史研究
  • 沖裕子(信州大学):全国規模の談話資料を利用した談話,言語行動の地域差の研究
  • 沢木幹栄(信州大学):言語地図の資料性の分析,計量的研究
  • 澤村美幸(和歌山大学):言語地図と文献による方言分布形成の研究
  • 高橋顕志(群馬県立女子大学):大量言語地図データによる言語接触の研究
  • 日高水穂(関西大学):言語地図,談話資料の総合的利用による地域差の研究

3年間の研究期間を通して,大規模方言データベースを活用した研究の実践により,研究の可能性を多角的に掘り下げる。また,データ整備,追加情報作成,必要な場合の補充的調査等は,主として第1,2年次(H21年度後半~H23年度前半)に行い,第3年次(H23年度後半~H24年度前半)には研究成果をまとめ,公開シンポジウムを開催する。

共同研究発表会

開催日時 開催場所 開催案内 開催概要
平成24年3月19日(14:45-15:45) 国立国語研究所
平成23年12月10日(13:50-16:40) 国立国語研究所
平成23年 3月17日(14:40-16:30) 国立国語研究所
平成22年 7月17日(14:40-16:30) 国立国語研究所
平成22年 3月15日(14:00-16:30) 国立国語研究所