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空間移動表現の類型論と日本語:ダイクシスに焦点を当てた通言語的実験研究

プロジェクトリーダー松本 曜
(神戸大学大学院人文学研究科教授)
研究分野言語対照
キーワード空間移動,類型論,ダイクシス
プロジェクトのHPhttp://mikftnk.dyndns-server.com/~motion/

概要

人や物が移動する現象を描写する移動表現に関しては,世界の諸言語で興味深い類型的な違いがあることが認知言語学的な研究の中で明らかになって来た(Talmy 1991, Slobin 2003など)。しかし,その研究の多くは移動の経路と様態に注目したものであり,ダイクシス動詞の役割は軽視されがちであった。本研究は,ダイクシス動詞の役割に注目することにより,移動表現の類型論の新しい全体像を示し,その上で日本語の移動表現の性質を類型論的に位置づけることにある。

本研究では,日本語に関する詳細な研究を行うと同時に,類型論的な立場から,通言語的な研究を行う。特に,研究分担者,協力者とのチームワークにより,同一の移動事象をどのように各言語が表現するかを見るために,ビデオを用いた発話実験調査を10以上の言語において行い,各言語の移動表現の性質に迫る。その結果を日本語と比較し,日本語の類型的な性質を明らかにする。

共同研究者(所属)

田村 幸誠(滋賀大学),高橋 清子(神田外国語大学),吉成 祐子(岐阜大学),小嶋美由紀 (関西大学),河内 一博(防衛大学校),古賀 裕章(慶應義塾大学),松瀬 育子(慶應義塾大学),江口 清子(大阪大学), 守田 貴弘(東京大学), 石橋美由紀 (リヨン第2大学), Fabiana ANDREANI (ナポリ東洋大学), 今里 典子(神戸市立工業高等専門学校),秋田 喜美(大阪大学),高橋 亮介(上智大学),バ ドマ(神戸大学),Prashant PARDESHI(国立国語研究所)

研究目的

今までの移動表現の類型論的研究においては,ダイクシス動詞が果たす役割について正当な注目がなされてこなかった。しかし,日本語などの言語の移動表現の性質はダイクシスを無視しては明らかにできない。本研究の目的は,そのダイクシス動詞の役割に注目することにより,日本語の性質がうまく捉えられるような,移動表現の新しい類型論を打ち立てることにある。

本研究の特色として,通言語的な実験的研究を行うことが挙げられる。このような手法は Max Planck Institute などで意味の類型論的研究において用いられてきたものであるが,日本国内ではあまり例を見ないものである。その調査をもとに,各言語(特に日本語)が,1) どのような場合にダイクシスを表現し,どの場合に無視するか,2)表現する場合に,移動の要素(様態,経路)との競合の中で,どの要素によって表現するのか,の二点を明らかにする。このような詳細な研究は,日本語の特色に迫る上で重要な意味を持つ。

研究計画・方法

本研究の研究方法上の特色は,ビデオ映像を用いた実験的研究を通言語的に行う点にある。「研究目的」で述べた二つの点を明らかにするためには,同一の状況をどのように各言語が表現するのかを調べなければならず,特にダイクシスについて調べるためには具体的な状況設定を行わなければならないからである。

具体的には,1)移動の様態,2)移動の経路(上下方向など),3)ダイクシスの方法(話者方向かどうかなど)の点で異なる一連の移動事象をビデオ撮影し,それを描写する発話実験を行う。そのデータを元に,上記の点に関する各言語の分析を行う。

日本語に関しては特に細かい実験調査を行い,その移動表現の性質を明らかにする(担当:松本・古賀)。基本的な点に関しては,以下の言語においても調査を行う。括弧内に担当者を示す。

英語(秋田),フランス語(守田・石橋),ハンガリー語(江口),シダーマ語(河内),タイ語(高橋),イタリア語(吉成・Andreani),マラーティー語(Pardeshi),ユピック語(田村),ラマホロット語(長屋),中国語(小嶋),日本手話(今里)

このほか,スワヒリ語,ロシア語,モンゴル語についても大学院生などの研究協力者の支援のもと,調査を行う予定である。

23年度にはメンバーが集まって,使用するビデオクリップを確定する。日本語に関する実験調査を開始する。また,他の言語についてフィールドワークによって調査を行う(いくつかの言語においては留学生などに協力をあおぐ)。

共同研究発表会

開催日時 開催場所 開催案内 開催概要
平成24年3月27日(9:30-17:00) 国立国語研究所
平成23年2月11日(10:00-13:00)
平成23年2月10日(13:00-18:00)
国立国語研究所