「日本の消滅危機言語・方言の記録とドキュメンテーションの作成」研究発表会 (平成30年6月17日)

プロジェクト名・リーダー名
日本の消滅危機言語・方言の記録とドキュメンテーションの作成
木部 暢子 (国立国語研究所 言語変異研究領域 教授)
開催期日
平成30年6月17日 (日) 10:00~16:00
開催場所
国立国語研究所 2F 講堂 (東京都立川市緑町10-2)
交通案内

事前申込み不要,どなたでも参加可能です。

平成30年度 第1回研究発表会 「動詞・形容詞 (琉球諸語) 」

趣旨

本プロジェクトでは,日本の消滅危機言語・方言の文法記述のために毎年テーマを設けて研究発表会を開催している。今年度のテーマは「動詞・形容詞」である。今年度第1回研究発表会では琉球諸方言における動詞・形容詞の各発表者による記述調査研究を議論,これまでに分かったことから,その課題を浮き彫りにし,動詞・形容詞研究の新たな研究手法を展望する。

プログラム

10:00~10:40 (質疑応答を含む) 研究発表「宮古語の動詞と形容詞 ―方言の分布と歴史的な変遷―」 セリック・ケナン (国立国語研究所)

本発表では,先行研究と調査結果に基づき,宮古語の動詞と形容詞に関わる形態素や機能語を体系的にまとめ,それらを通方言的な観点で紹介する。特に,各形態素や機能語の方言分布に着目し,宮古祖語の動詞と形容詞の体系を明らかにした上で,各方言にいたるまでの歴史的な変遷の概要を述べる。

10:40~11:20 研究発表「与那国語の動詞・形容詞の活用パラダイムと調査・習得の方法」 山田 真寛 (国立国語研究所)

本発表は琉球与那国語の動詞 (形容詞は形態論的観点から動詞の1クラスとする) の形式変化パラダイムを報告する。すべての動詞の形式変化を記述する,屈折・派生形態素の両方を含めた活用表を提示し,任意の動詞形式からその動詞の形式変化パターンを特定する方法を,与那国語の調査者と継承/学習者双方が利用可能なかたちで提案する。形式変化パラダイムは,語根に最大3つ,接辞に最大2つの異形態を認め,言語全体に適用される音素配列規則 (phonotactics) を仮定して記述する。また de Chene (2017) が提案する音韻規則についても議論する。

11:20~11:30 休憩

11:30~12:10 研究発表「南琉球八重山波照間方言の動詞形態論」 麻生 玲子 (国立国語研究所)

本発表では波照間方言の動詞の基本構造とパラダイムを提示する。この他,次の点に関して詳しく論じる。

  1. 従来形容詞と分類されてきたものの語尾を見ると,動詞として分類できるため,共時的には動詞に分類する。ただし,歴史的に名詞+存在動詞を由来とする名残りからか,2アクセント単位観察される。しかし自立語が2つ並ぶ「句」というほど自由ではない。共時的には句全体が化石化しているため,分析の際に1語なのか句なのか決め難いという背景がある。
  2. 継続と完了の動詞形式がアクセントで区別される。

12:10~13:00 昼食

13:00~13:40 研究発表「北琉球奄美大島湯湾方言の動詞・形容詞形態論」 新永 悠人 (国立国語研究所)

本発表では,奄美大島の湯湾集落で話されている方言の動詞の形態素 (語根・接辞) を分類するにあたり,音韻論的基準と非音韻論的基準を区別する必要性を論じる。形容詞に関しては,形容詞のみの場合と,形容詞と状態動詞を用いる場合があることを示す。

13:40~14:20 研究発表「喜界島方言の動詞・形容詞について」 白田 理人 (志學館大学)

喜界島方言の動詞・形容詞の特徴として,以下を論じる。

  1. 品詞分類について
    同じ語根から作られるsa形容詞とku形容詞が, (方言によって) コピュラとの共起に関して異なる振る舞いを示し,別品詞として分析可能である。
  2. 動詞形態論について
    接辞付与だけでなく,重複や名詞・形式名詞との複合によってTAM標示がなされる。
  3. 動詞形態音韻論について
    語幹末が有声閉鎖音+短狭母音+rに遡る場合,母音脱落及び子音同化の通時的変化により, (方言によって) 共時的には不規則な音交替を示す。

14:20~14:30 休憩

14:30~15:10 「総括にかえて」 平子 達也 (駒沢大学)

後の議論のきっかけを作るべく,5つの発表の内容を踏まえつつ,日琉諸語・諸方言の動詞・形容詞に関する記述的研究について,発表者の考える課題を提示する。

15:10~15:40 ディスカッション

15:40~16:00 事務連絡