「日本の消滅危機言語・方言の記録とドキュメンテーションの作成」オンライン研究発表会 (2021年6月13日)

プロジェクト名・リーダー名
日本の消滅危機言語・方言の記録とドキュメンテーションの作成
木部 暢子 (国立国語研究所 言語変異研究領域 特任教授)
開催期日
2021年6月13日 (日) 10:30~16:20
開催場所
Web開催 : Zoom参加 (質疑参加希望者) もしくは YouTube Live配信 (視聴のみ)

Zoom参加をご希望の方は,事前登録フォームからお申し込み下さい。Zoom会議の URL と会議ID,パスワードを後日お送りいたします。

研究会の様子は同時に YouTube Live でも配信いたします。こちらはどなたでも視聴できます (視聴のみで質問は受け付けません)。

関連サイト
https://kikigengo.ninjal.ac.jp/events.html

令和3年度 第1回オンライン研究発表会 「格と形容詞」

趣旨

本プロジェクトでは,日本の消滅危機言語・方言の文法記述のために毎年テーマを設けて研究発表会を開催していますが,このコロナ禍をうけ,今年度は当初予定していたテーマでの調査が困難な状況となりました。そこで,各発表者が希望する発表をまとめて,「格と形容詞」に注目した研究発表を行うことにしました。研究発表と質疑・応答はすべてオンラインで行います。

プログラム

10:30~10:35 あいさつ

10:35~11:15 (質疑応答を含む) 研究発表「福岡県柳川市方言における Property Concept を表す語の品詞論:動詞との形態統語的な相違点に着目して」 松岡 葵 (九州大学大学院 博士後期課程)

本発表は,福岡県柳川市方言における Property Concept を表す語 (例 : hayaka 「早い」,hayakatta 「早かった」) の品詞的ステータスについて,形態論・統語面の両側面から考察する。Property Concept (Thompson 1988) を表す語 (以下,PC語) とは,物事の性質を表す語であり,その品詞的ステータス (動詞の下位類か,名詞の下位類か,別個の品詞か) は言語を記述する上で重要なトピックとなる。

一部の九州方言は,一般にカ語尾と呼ばれるふるまいを示し,PC語は多くの活用形で hayaka 「早い」のように ka という要素を含む。ka は,通時的には接辞 -ku と動詞 ari 「ある」に由来し,九州方言の研究では ka 及び ka を含む要素を屈折形容詞のとる屈折接辞とする分析と, ka を動詞派生接辞とする分析の両方がなされている。本発表では,形態論・統語論の両側面において柳川方言におけるPC語が動詞とは異なるふるまいを示すことを示し,屈折形容詞という個別の品詞を認めるほうが記述上のメリットが大きいと主張する。

11:15~11:55 研究発表「宮古語大神方言 形容詞重複形の機能を中心に」 金田 章宏 (千葉大学)

宮古語大神方言の形容詞の重複形をふくむ形式が文の成分としてどのようなふるまいをするのかを整理する。

重複形は語形としては基本的にこれ以上変化することはなく (連体格が~nuになるのみ) ,ひとつの語形がさまざまな機能で使用される。その点で,日本語の形容詞が機能によって「しずかだ=終止形」「しずかな=連体形」「しずかに=中止形」と変化するのとは異なる。

重複形はそのままで,またはコピュラや補助動詞 uɿ/aɿ とともに,述語に使用される。また,いくつかの組み合わせパタンのなかで,連体格~nuの形で規定語=連体修飾語に使用される。さらに,文中で中止的に使用され,二股述語文の先行述語や述語動詞を飾る修飾語 (どんなふうに) などに使用される。

このように形容詞の重複形およびこれをもとにした形式は,単純語幹の形容詞のパラダイムほど豊かではないにしても,文中での基本的な機能を果たすといえる。
(機能 : 文における切れ続き=終止・連体・連用)

11:55~13:30 昼休み

13:30~14:10 研究発表「福岡今津方言の格助詞ととりたて性」 荻野 千砂子 (福岡教育大学),三苫 麻里 (福岡中央美術)

本発表では,2018年に録音した今津地域の談話を元に,格助詞の形式と用法について述べる。また,併せてとりたて性をもつ助詞についても概要を整理する。

主格は =ノ が主に用いられるが,=ガ も用いられ,一人称代名詞で主格を表す「わ=ガ」は一語化している。「あたき (一人称代名詞) =ガ」の音声形は atak=ka ともなる (博多方言では atag=ga) 。属格は =ノ を用いるが,「わ=ガ」は属格の用法も持つ。また,対格,場所格,方向格,引用格に =ɸ (無助詞) が見られるため,=ɸ となる文タイプを整理する。その際,助詞が表示されると有標となり,とりたて性が生じる可能性を触れる。

14:10~14:50 研究発表「熊本県八代市方言の格 : 初期報告」 山田 高明 (国立国語研究所 / 一橋大学大学院 博士課程)

本発表では,エリシテーション調査および談話資料から得られたデータに基づき,熊本県八代市方言の格標識について報告する。

14:50~15:00 休憩

15:00~15:40 研究発表「徳之島伊仙方言の与格」 加藤 幹治 (日本学術振興会 特別研究員 / 東京外国語大学)

伊仙方言の与格の用法を整理すると共に,これまで提唱されてきた与格の Semantic map (cf. Haspelmath 2013) を改訂する。

15:40~16:20 ディスカッション