ことばQ&A

質問

私は手紙や文書のあて名はもっぱら「様」を使いますが,役所などの文書では「殿」が使われていることがあります。「様」と「殿」はどのように使い分けられているのでしょうか。

回答

「様」は,男性・女性を問わず,目上・目下に関係なく,個人に対する最も一般的な敬称として広く用いられています。手紙や文書のあて名も,「様」を用いるのが一般的です。連名の場合も,敬称はそれぞれに付けます。

「殿」については,昭和27年に国語審議会が建議した「これからの敬語」で,「公用文の「殿」も「様」に統一されることが望ましい」とされたのですが,現在でも,公用文では一般に「殿」が使われています。省庁の公文書でも,あて先の敬称には「殿」を付けています。

公用文のあて名は,機関名,部局名,役職名,個人名など,種類も多く複雑ですが,機関名でも役職名でも,あて名に付ける場合には,「○○市教育委員会殿」,「国立国語研究所○○課長殿」のように,「殿」が多数派です。

このように,公用文で「殿」が引き続き使用されている背景には,「公と私の区別が明確になる」,「官職名や役職名につけてもおかしくない」などの理由があると言われています。

ただし,昭和40・50年代から,地方公共団体の中には,公用文でも「殿」をやめ,「様」にするところが出てきました。静岡県・神奈川県・愛知県・埼玉県・千葉県などが,文書の中の敬称を「殿」から「様」に切り替えました。

このような「様」への移行は,「殿」は上意下達式の尊大さを感じさせる,「殿」を用いると目下扱いにされた気持ちになる,「殿」では必要以上に堅苦しい,といった人々の意識がきっかけとなったようです。

そのほか,あて名には,「御中」「各位」のように,個人あてではない文書に用いられるものもあり,それぞれ次のように用いられます。

「御中」は,会社・官庁・学校など,団体・機関・組織にあてる文書で用いるあて名で,個人名を書かず,機関名や部局名だけをあて名にするときは,「御中」にほぼ統一されています。ある組織に属する人すべてを指す言い方で,組織に対する敬意を含みますが,敬称とは異なります。部課名連記の場合も,「御中」は最後に一つだけ添えます。

「各位」は,手紙の表書きとしては使いませんが,文書のあて名としては,ある組織に所属する一人一人に,個人名を省略して,同文の手紙や文書を送る場合に使います。「社員各位」「会員各位」「保護者各位」などがその例です。「各位」の「位」は「皆様方それぞれ」の意味で,「各位」も人に対する敬称なので,「各位様」「各位殿」のように,「様」や「殿」を付ける必要はありません。

(井上 文子)