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方言談話の地域差と世代差に関する研究

略称方言談話
プロジェクトリーダー井上文子
研究分野日本語学・方言学
キーワード方言分布,言語変化,社会言語学,談話資料

概要

異なる出身地の人と話をしていると,語彙やアクセントではなく,話の進め方そのものに違和感を覚えることがある。特に,大阪人の話し方が独特であると意識する人は多いように思われる。話の進め方には地域特有の何かがありそうだということは,誰もが漠然と感じていることであろう。

しかし,方言によって話題の展開のしかたにどのような地域差があるのか,談話展開の方法に一定の類型があるのか,まだわかっていない点は多い。

このようなことを客観的に明らかにするためには,語や句や文を超えた単位である談話全体をひとまとまりとしてとらえ,実際のコミュニケーションとしての談話を分析することが求められる。

そこで,本プロジェクトでは,各地の方言談話を収集し,談話展開の談話標識として機能している接続表現や間投表現に焦点をあてて,方言談話に出現する言語事象について記述・分析する。さらに,各地域・各世代の方言談話の比較・対照を試みる。この調査・研究によって,方言談話の実態と,その地域差・世代差を解明するための仮説・枠組みを明確にすることを目的とする。

共同研究者(所属)

熊谷智子(東京女子大学),小西いずみ(広島大学大学院),高橋顕志(群馬県立女子大学),日高水穂(関西大学),松田美香(別府大学),三井はるみ(国立国語研究所)

研究目的

本プロジェクトは,将来,方言談話の類型と変容に関する大規模な調査・研究を実施することを前提として,そのためのパイロット調査的な役割を果たすものである。重点地域において必要な諸データを得ること,次の点に関わる仮説や枠組みを明確にすることを目的とする。

  1. 方言談話の収集・分析を通じて,文法研究および談話分析の観点から,実際の文脈の中における言語事象の使用実態や機能を把握する。
  2. 地域間比較をおこない,方言談話の類型を記述する。
  3. 世代間比較をおこない,その変容の方向を明らかにする。

本プロジェクトは,時空間変異研究系が目標とする「現在および過去における地理的・社会的変異,歴史的変化の様相を解明する」研究として位置づけられ,「方言の全国調査,琉球など消滅危機方言の調査,現代日本語の動態の解明,日本語変種の形成過程といった共同研究」を補完するデータを提供するものである。収録した方言談話は,研究者に活用されることを想定し,研究情報資料センターにも保存する。

研究計画・方法

平成23年度

(1)既存の方言談話資料を基礎データとして,方言談話にみられる言語事象について記述・分析をおこなう。特に,談話標識として機能する間投表現,接続表現などの要素に焦点をあてて,談話展開の特徴について整理する。

(2)それぞれのテーマの解明に必要な事項を検討し,データ収集のための方言談話の収録調査を企画する。基礎データの記述・分析に基づいて,収録調査を実施すべき重点地域を選定する。基礎データと比較するために,原則として,基礎データの収録地点から調査候補を選ぶ。重点地域は,共同研究者との検討を経たうえで決定するが,現時点での候補は,①東京,②大阪を想定している。これらの地点は,先行研究でも対象とされた地点であるが,話者数・収録時間数が十分とは言えず,談話展開の特徴が地域差であるのか個人差であるのか,しばしば指摘されるところである。そこで,本プロジェクトでは,一地域の方言談話について,できる限り多くのデータを収集することとする。また,談話の種類(自然会話・インタビュー・作業説明・民話の語り・場面設定の会話など)や,談話の参加者の組み合わせ(性別・年層・上下・親疎・人数など),話題などについて,どの程度コントロールするかを検討し,収録調査の際の条件を統一する。

平成23年度・平成24年度

(3)選定したそれぞれの重点地域において,統一した条件のもとで,複数の世代(高年層60~70歳代,若年層20~30歳代)について,各2~3名のグループによる方言の自然会話を,収録の対象とする。これに加えて,さまざまな種類・組み合わせの方言談話をできるだけ多く収録(録音・録画)する。方言談話の音声の録音とともに,談話データを分析する際には非言語行動の重要性も高いため,談話の場面の録画をおこなう。

平成23年度・平成24年度・平成25年度

(4)収集した談話は,収録地の方言と地域情報について知識のある協力者に依頼し,録音・録画をもとに,方言音声のテキスト化,共通語訳,注記付与をおこなう。テキスト化・共通語訳・注記はメンバーが校閲し,また,表記についても検討して,正確な言語データとして利用できるように整備する。

平成25年度

(5)基礎データと同様に,収録した談話に現れた間投表現・接続表現について形式を整理し,また,談話の構造や談話標識などを観察し,実際の文脈の中での運用や機能について記述・分析する。

(6)地域間,世代間,場面の比較をおこない,談話のパターンや変化の様相について考察する。

平成22年度~平成25年度

(7)記述・分析の過程で,随時,検討会・研究会を開き,分析結果,考察などについて意見を交換する。

(8)研究発表会,シンポジウムを開催する。

共同研究発表会

開催日時 開催場所 開催案内 開催概要
平成23年7月31日(16:00-17:20) 国立国語研究所
平成23年3月22日(14:00-15:30) 国立国語研究所