令和5年度 第2回「危機言語の保存と日琉諸語のプロソディー」合同研究発表会

開催期日
2024年3月17日 (日) 10:40~15:40
開催場所
対面とオンラインのどちらでも参加できる、ハイブリッド形式で開催
  • 国立国語研究所 多目的室 (東京都立川市緑町10-2) 交通案内
  • オンライン (Web会議サービスの「Zoom」を使用)
主催
  • 国立国語研究所 共同研究プロジェクト 「消滅危機言語の保存研究」
  • 国立国語研究所 共同研究プロジェクト 「実証的な理論・対照言語学の推進」
    ・サブプロジェクト 「日本・琉球語諸方言におけるイントネーションの多様性解明のための実証的研究」
参加申し込み

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お問い合わせ
h-oshima[at]ninjal.ac.jp ([at]を@に変えてください。)
キーワード
研究発表会・シンポジウム、オンライン開催、方言、音声・音韻、語彙・意味、文法、文字・表記、琉球諸語、危機言語・方言

趣旨

2022〜2028年度に行う日琉語諸方言の保存研究と、日琉語諸方言のイントネーション研究プロジェクトの共同研究員による研究発表会です。プロジェクト2年目の第2回目の今回は両プロジェクトの共同研究員による音声および文法に関する様々な研究発表を行います。

プログラム

サルバトーレ・カルリノ氏の発表は都合により中止となりました。
  • 10:40〜11:20
  • 研究発表 「八重山語の韻律体系」
  • セリック・ケナン (国立国語研究所)
  • 本発表では、調査研究の最新の成果に基づき、八重山語諸方言の韻律体系の特徴を概観し、方言間のバリエーションを説明するための変数を整理する。まず、共通点として、八重山語のほとんどの方言では音節より上位、文節下位の韻律単位 (いわゆる「韻律語」) が数えの単位として機能しており、ピッチ変動の有無と位置 (1番目か2番目の韻律語) によって少なくとも3つのアクセント型 (a型、b型、c型) が区別されている。次に、方言間のバリエーションを捉えるためには、ピッチ変動の方向 (上昇か下降) 、韻律語内におけるピッチ変動の実現位置 (次末音節か末尾音節) 、b型をめぐる中和現象 (アクセント実現型、アクセント浮遊型、アクセント実現とアクセント浮遊の共存型) 、語の長さによる対立数の制約の有無 (単純語・複合語三型、単純語二型・複合語三型) の変数が必要であることを示す。それに加えて、語頭分節音の有性声を条件とした声調派生 (波照間・白保方言) や、語末母音を条件とした声調派生 (西表西部諸方言) の結果によって新しく生じたアクセント型の対立も見られる。以上を踏まえて、通時的な観点から八重山語の韻律体系が経験している変化の方向性について簡単に述べる。
  • 11:20~12:00
  • 研究発表 「白山麓方言の授与動詞体系」
  • 松倉 昂平 (金沢大学)
  • 本発表では福井県大野市上打波方言の授与動詞体系の記述を行う。上打波地区は大野市の北東部にあり石川・岐阜県境に接する白山麓の山村で、同じく白山麓にある石川県白峰方言や富山県五箇山方言との間には語彙・文法面で多くの共通点がみられる。授与動詞体系の類似もその一つで、例えばクレルに視点制約がない (求心的授与にも遠心的授与にも使われる) 点も3方言の共有特徴である。イクス (共通語の「寄越す」に対応) も五箇山と上打波では視点制約がなく両方言ともに特殊かつ類似の補助動詞用法を有する。上打波ではヤル、クレル、イクスの3語に加えて、様々な待遇語 (クレルの尊敬語にあたるオグレル、タモルや、クレルの軽卑語にあたるカスなど) の使い分けも問題となる。
    特に五箇山方言の授与動詞に関しては詳細な記述が残されており (日高1994、2007など) 、先行研究 (五箇山方言) と対照する形で、上打波方言の記述・分析を行っていく。
  • 12:00~13:30 昼休み
  • 13:30~14:10
  • 研究発表 「動詞接辞を中心とした高知方言のTAM体系」
  • 中澤 光平 (信州大学)
  • 本発表では、高知県高知市および南国市での発表者による現地調査で得られたデータに基づき、高知方言 (高知市方言、南国市方言) のテンス・アスペクト・モダリティ体系について、動詞接辞を中心に形式と意味の整理を行う。とりわけ、次の点に焦点をあてて論じる。
    ・「ユー / チュー」の意味
    ・とりたて形
    ・他方言との比較対照
  • 14:10~14:50
  • 研究発表 「理由の接続助詞と終助詞・間投助詞の連接 ―首都圏・熊本・倉吉方言を対象に―」
  • 阪上 健夫 (東京大学大学院 人文社会研究科博士課程)
  • 理由の接続助詞が文末で使用される場合、終助詞に近い用法がある。熊本方言や鳥取県倉吉方言の理由の接続助詞には、首都圏方言で「から」が用いにくく終助詞を用いた方が自然な文末用法がある。これは、接続助詞の終助詞化の程度に方言差があることを意味する。また、文末における接続助詞と終助詞の連接には、文中での間投助詞との連接とは異なる現象が見られる。本発表では、首都圏・熊本・倉吉方言話者を対象とした面接質問調査の結果にもとづき、これらの方言における理由の接続助詞の文中用法と文末用法の間の連接関係の異同を明らかにする。例えば、熊本方言では文中の場合「タイ」が間投助詞として理由の接続助詞に後続し得るが、文末では専ら「ネ」の類の終助詞が後続する。そして文末用法の場合は、「ヨ」「バイ」「タイ」が使われる形態統語環境で理由の接続助詞が使われ得る。ここから、文末で使われる理由の接続助詞は「ヨ」「バイ」「タイ」といった終助詞と範列的な対立関係にあることを主張する。
  • 14:50~15:00 休憩
  • 15:00~15:40
  • 研究発表 「宮古語大神方言 助辞カミとターシのふるまい」
  • 金田 章宏 (千葉大学 名誉教授)
  • 宮古語大神方言の助辞カミとターシには日本語のマデと同様、格ととりたての用法がみられるが、カミにはそれ以外の興味深い用法がみられる。焦点化助辞トゥに類似した用法とのべたて文をはたらきかけ文に変える用法である。格ととりたての用法は大神方言以外の宮古語諸方言にもみられるようだが、それ以外の2つの用法については確認できていない。
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