所長メッセージ

所長 田窪 行則

2022年は第4期中期計画の最初の年になります。第4期に向けて、2021年度は、前半期は第3期のまとめ、後半期は第4期に向けての準備を行いました。

第4期にはこれまでの5つの領域に分けられていた教員組織を廃止し、研究主幹に直接所属して、プロジェクト単位で研究活動をしていきます。第4期のテーマは「開かれた言語資源による日本語の実証的・応用的研究」となる予定です。これは「オープンデータによる日本語の経験科学的研究とその応用」という観点からさまざまな共同研究を行うという趣旨です。フィールド調査、実験などのデータに関してもオープンデータとして公開し、オープンデータを使って研究をする、いわゆる人文科学におけるオープンデータサイエンスを確立することが目標となります。これまでの国語研が作ってきたデータを拡張するだけでなく、そのデータをどのように内外の研究者、産業界に利活用してもらうかなどを研究し、応用していく予定です。地域言語・地域方言の母語話者など、地域社会の当事者の方たちにデータの取り方、記録、分析の方法などを学んでいただくという、いわゆる「市民科学者」の育成も第4期の目標の一つとなっています。

また、国語研の二つのセンターも組織替えを行います。第3期の「コーパス開発センター」は「言語資源開発センター」に名称を変え、コーパス開発センターの研究資源を受け継ぐとともに、言語資源の基礎研究、開発、共同研究プロジェクトにおける言語資源関連研究の技術的支援などを行っていきます。第3期の「研究情報発信センター」は「共同利用推進センター」と名称を変え、研究情報発信センターの機能を受け継ぐとともに、研究資源 (コーパス等) の受入・公開に関する機能を加えていきます。どちらの改変も第4期の目標に合わせたもので、これまでの2センター機能を強化したものとなります。

国際的な展開も第4期にはさらに拡張していく予定です。第3期には Berlin/Boston の De Gruyter Mouton 社との MOU に基づいて Handbook of Japanese Language and Linguistics 全12巻の刊行を始め、現在8巻まで刊行し、2022年度にはほぼ全巻の刊行のめどがたっています。第4期には De Gruyter Mouton 社との新しい MOU を結び、The Mouton-NINJAL Library of Linguistics というシリーズを始めます。

さらに Brill 社とも MOU を結んで、ハワイ大学の協力を得て、Endangered and Lesser-Studied Languages and Dialects というオンラインのフリーアクセスのシリーズを始めます。Brill 社の新シリーズは、日本国内および周辺地域の危機言語の記述的研究に関する英文の著作の刊行を補助するものです。危機言語や少数話者の言語の記述研究は出版が難しく、他の出版社では引き受けてくれないのですが、出版費用を国語研が補助することで、査読付きの本の出版を可能にする取り組みです。多くの方の応募をお願いいたします。2022年度にはどちらのシリーズも最初の本が刊行されます。ご期待ください。

第4期には、2023年度より総合研究大学院大学 (総研大) に参加することを予定しています。すでにカリキュラムの検討が終わり、入学者の募集の準備をしています。博士後期課程のみのコースですが、国語研のリソースを使って、ディジタルヒューマニティーズの基礎を持つ日本語研究者、日本語教育研究者を育てるという、日本ではほかに見られないコースカリキュラムになる予定です。奮ってご応募くださるようお願いいたします。

2022年4月
国立国語研究所 所長 田窪行則

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