日本語言語科学特別講義 / 第145回NINJALコロキウム
「言語習得を可能にするのは何か ―記号接地、アブダクション、ブートストラッピング」
- 開催期日
- 2024年11月5日 (火) 15:10〜16:40YouTubeで当日の「言語習得を可能にするのは何か ―記号接地、アブダクション、ブートストラッピング」講義動画を公開しています。
- 開催場所
- 対面とオンラインのどちらでも参加できる、ハイブリッド形式で開催
- 国立国語研究所 (東京都立川市緑町10-2) 交通案内
- オンライン (Web会議サービスの「Zoom」を使用)
- 参加申し込み
受付は終了しました。お申し込みありがとうございました。
いただいた個人情報は、個人情報保護ポリシーに則り、厳正に取り扱います。- 定員
- オンライン300名 (先着順)
対面50名 (先着順) - 講師
- 今井 むつみ (慶應義塾大学 環境情報学部 教授)
- 専門領域
- 認知科学 (特に認知発達) 、言語心理学
- 主要業績
- Imai, M., Akita, K. (2023) The Iconicity Ring Hypothesis Bridges the Gap Between Symbol Grounding and Linguistic Relativity: TopiCS in Cognitive Science, 15, 676-682.
doi: http://doi.org/10.1111/tops.12671 - Imai, M., Murai, C., Miyazaki, M., Okada, H & Tomonaga, M. (2021). The contingency symmetry bias (affirming the consequent fallacy) as a prerequisite for word learning: A comparative study of pre-linguistic human infants and chimpanzees: Cognition, 214, 104755.
doi: https://doi.org/10.1016/j.cognition.2021.104755 - Saji, N.,Asano, M., & Imai, M. (2020) Acquisition of the meaning of the word orange requires understanding of the meanings of red, pink and purple: Constructing a lexicon as a connected system. Cognitive Science. 44(1), e12813.
doi: https://doi.org/10.1111/cogs.12813 - Imai, M. & Kita, S. (2014). The sound symbolism bootstrapping hypothesis for language acquisition and language evolution. Philosophical Transactions of the Royal Soceity B, 369(1651).
- Imai, M., Akita, K. (2023) The Iconicity Ring Hypothesis Bridges the Gap Between Symbol Grounding and Linguistic Relativity: TopiCS in Cognitive Science, 15, 676-682.
- 講演要旨
- ことばの意味とは何かというのは、古くから哲学者、言語学者、心理学者が考察してきた問題である。記号形式と対象の対応がどのようなもので、それをどのように無駄なく数学的に定式化するかという試みや、人間の心の中で、意味が処理される情報処理の心的 (脳内) 過程を明らかにしようとする試みなど、多彩な理論が提案されてきた。ここでは、子どもが自分が学習する言語の成人母語話者と同じように単語を運用できるためには、何を学ばなければならないのかという視点から単語の意味表象について考えてみたい。
子どもはことばの「意味」を直接教えてもらうことはできない。ことばが発話された状況で、ことばが状況中の何を指し示しているのかを見つけるのは当たり前にできることではない。「ウサギ」や「リンゴ」のような事物名詞でもあたりまえにできるわけではないが、動詞は、観察する状況のどこに対応するのかは明らかでない。動詞によって行為そのものを表すものと結果のみを表すもの、行為と結果両方を含むものがあるからである。運よく状況中の指示対象を捉えられたとしても、さらにもっと困難な問題が待ち受けている。状況中のことばと指示対象の対応付けはひとつの点にすぎず、そのことばを運用するためには点から面に拡張、つまり一般化をしなければならない。一般化をするために子どもは何を知らなければならないか。ことばは名詞、動詞、形容詞など、品詞によって、切り取る「同じ」が異なる。したがって、子どもはまず言葉の品詞を知らなければならないし、どの品詞が対象のどの部分を切り取るのかをあらかじめ知っていなければならない。それがわかっても、まだことばは運用できない。単語の意味は当該の単語単独で決まるわけではなく、その単語を取り巻く隣接する単語との関係できまる。隣接する単語を知り、それとの境界がどこでどのように惹かれるのかがわからなければ単語の運用はできない。つまり単語が属する語彙の他のことばを知らないと一つの単語の使える範囲がわからないのである。さらに、単語は基本的に多義であるので、一つの単語について、複数の意味を知り、文脈によって適切な意味を選択できなければならない。
このように、ひとつの単語を運用するだけでも、単語と対象の結びつきだけではなく、背後に膨大な暗黙の知識 (=スキーマ) をもつことが必要となる。人間の子どもはどのようにして短期間にこのような知識を得ることができるのだろうか?本発表では、「記号接地」「アブダクション」「ブートストラッピング」の3つのキーワードを軸に、この偉業を可能にするメカニズムについて提案する。 - キーワード
- 講演会、オンライン開催、NINJALコロキウム、認知科学、認知発達、言語心理学
日本語言語科学特別講義とは
総合研究大学院大学 日本語言語科学コースの開設を記念し、国内外の優れた研究者から日本語学・言語学・言語処理・日本語教育のさまざまな分野について、最前線の研究成果をお話しいただきます。
NINJALコロキウムとは
国内外の優れた研究者を講師にお招きし、日本語・言語学・日本語教育のさまざまな分野について最前線の研究成果をお話しいただく講演会です。一般に公開していますので、教員・大学院生を問わず、ご自由にご参加ください。 (参加無料)
スケジュール : 不定期。原則として、1ヶ月1回。
事前の参加申し込みが必要ですので、ご注意ください。
今回の日本語言語科学特別講義はNINJALコロキウムを兼ねて、「日本語言語科学特別講義 / NINJALコロキウム」として開催し、後日、その内容を録画したものをYouTube上の国立国語研究所公式チャンネルに投稿する予定です。