著書紹介

最近の研究成果の出版物や,国語研究所の所員が執筆・編集した主な出版物をご紹介します。

太字 : 発行時の在籍者

日本語と世界の言語のとりたて表現

書影

野田 尚史 (編著)
プラシャント・パルデシ,他 (著)

くろしお出版 (詳細ページ),2019年11月16日,ISBN 9784874248126

この本は,「だけ」「さえ」「も」のようなとりたて表現について,日本語と世界のさまざまな言語の共通点と相違点を明らかにするために,22名の研究者が共同研究を行った成果である。
古代日本語では係り結びという文法現象があったため,係り結びに関係する係助詞と関係しない副助詞を区別していた。係り結びがなくなった現代日本語では係助詞と副助詞を区別する必然性がなくなり,係助詞と副助詞をとりたて助詞としてまとめて扱うことが多くなってきた。
とりたて助詞の研究は30年ほど前から少しずつ盛んになり,現在では「とりたて」は現代日本語で重要な文法概念になってきている。
日本語以外の世界のさまざまな言語でも,「だけ」「さえ」「も」のような意味を表す表現が見られる。しかし,それぞれの言語の文法では,とりたてを表す表現は副詞などを分類するときに触れられるだけで,重要な文法的概念とは考えられていないことが多い。
そのような状況を打ち破るために,私たちは日本語だけでなく,世界のさまざまな言語のとりたて表現の研究を大きく進展させるための共同研究を行った。
日本語については,現代日本語のとりたて表現の研究をもとにして,古代日本語や,日本語を母語としない学習者の日本語などを取り上げた。日本語以外の言語については,日本語のとりたて表現の研究をもとにして,さまざまな言語のとりたて表現について特に特色のある現象を中心に分析した。
日本語以外の言語についてはこれまであまり研究が行われてこなかったテーマであるため,研究には苦労が多かったが,日本語との共通点と相違点が浮かびあがり,とりたて表現の研究のおもしろさを示せる成果が得られたと考えている。 (「この本の目的と構成」より)

前頭葉を刺激! 50歳からの1分音読でボケない脳になる

書影

柏野 和佳子西原 志保,平本 智弥,間淵 洋子 (編)

PHP研究所 (詳細ページ),2019年10月4日,ISBN 9784569845081

今,脳を活性化するトレーニングとして注目されているのが,「音読」です。人間の脳の中でいちばん大きな部分を占めており,思考や創造,運動を司るのが,前頭葉。脳の司令塔と言われています。「第1章 情景を思い描く音読」「第2章 言葉のリズムやテンポを楽しむ音読」「第3章 日本語の美しさを味わう音読」など,本書で取り上げた56編の作品は,1編見開き約1分で読み終わるように,紹介されています。古典から現代文まで,さまざまなジャンルを扱っているので,毎日飽きずに読み続けられます。黙読と違って,声に出して読むことで,高い音域と低い音域を使い分け抑揚をつけたり,息継ぎやテンポを変えて読むなど,様々な楽しみ方ができます。音読をすることは,働きが衰えてきた前頭葉を活性化できるだけではなく,言葉の力が磨かれ,人生を豊かにすることにもつながります。まずは好きな作品を選んで,少しずつ始められることをお奨めします。

学習者コーパスと日本語教育研究

書影

野田 尚史迫田 久美子 (編)

くろしお出版 (詳細ページ),2019年5月30日,ISBN 9784874248003

本書の目的は,日本語学習者の言語データを集めたコーパスをどのように拡充させていけばよいか,また,すでにできているコーパスをどのように活用して日本語教育研究を行えばよいかを示すことである。
日本語教育に実際に役立つ研究を行うためには,理論から出発するより学習者の言語データから出発するのがよいことが多い。しかし,個人で集められるデータには限りがある。そのため,データをコーパスとして公開し,共有することが重要になる。
同じデータをもとにしても,研究者によって注目することが違うことが多い。公開されたコーパスがあれば,1つのデータからさまざまな研究が行われる可能性も高くなる。
(中略)
現在は,日本だけでなく,海外でもさまざまなコーパスが作られ,インターネットでの公開も進んでいる。しかし,日本語学習者の日本語を分析し,日本語教育に役立つ研究を行うためには,さらにさまざまなタイプのコーパスを作っていく必要がある。また,コーパスを使った研究のテーマや研究方法をさらに多様化する必要がある。
本書では,これまでのものとは違うタイプのコーパスを構築することを提案するとともに,すでに構築されているコーパスを使いながら新しいタイプの研究を行った例を示す。今後のコーパス構築やコーパスを活用した研究に刺激を与えたいからである。

Ideophones, Mimetics and Expressives

書影

秋田 喜美プラシャント・パルデシ (編)
窪薗 晴夫,他 (著)

John Benjamins Publishing Company (詳細ページ),2019年5月,ISBN 9789027203113

This volume explores new frontiers in the linguistic study of iconic lexemes known as ideophones, mimetics, and expressives. A large part of the literature on this long-neglected word class has been dedicated to the description of its sound symbolism, marked morphophonology, and grammatical status in individual languages. Drawing on data from Asian (especially Japanese), African, American, and European languages, the twelve chapters in this volume aim to establish common grounds for theoretical and crosslinguistic discussions of the phonology, morphology, syntax, semantics, pragmatics, acquisition, and variation of iconic lexemes. Not only researchers who are interested in linguistic iconicity but also theoretical linguists and typologists will benefit from the updated insights presented in each study.

明解方言学辞典

書影

木部 暢子 (編)
青井 隼人 (編集協力者),大西 拓一郎木部 暢子中川 奈津子新永 悠人山田 真寛 (編集協力者),鑓水 兼貴,他 (分担執筆)

三省堂 (詳細ページ),2019年4月20日,ISBN 9784385135793

本辞典は,各地域のことば (方言) を調査・研究するときに知っておきたい概念や用語,必要な事項をできるだけ分かりやすく解説したものです。これまで,各地の方言を集めた,いわゆる方言語彙集やフィールドワークの方法を解説した書籍はいくつかありましたが,方言学に特化したコンパクトな辞典はありませんでした。
(中略)
本辞典は,すでに刊行されている『明解言語学辞典』を参考にしています。大きさがハンディーで,フィールドワークに持っていくのにちょうどいいこと,見出しがすべてページの上に来ていて,引きやすくなっていること,各項目の記述が半頁から2頁の間でコンパクトにまとめられていることといった体裁上の特徴もさることながら,最も参考にしたのは,「近年急速に研究が進んだ分野の新しい概念も多く取り入れられ」ている点です (『明解言語学辞典』「はしがき」より)。方言の分野でいうと,近年の琉球諸方言の研究成果には目を見張るものがあります。本辞典では,これらを積極的に取り入れました。
(中略)
本辞典が各地のフィールドワークで使われることを願っています。