多様な言語資源に基づく日本語非母語話者の言語運用の応用的研究

プロジェクトリーダー
石黒 圭 (国立国語研究所 教授)
実施期間
2022年4月~
サブプロジェクト
課題名 サブプロジェクトリーダー 実施期間
日本語学習者の作文の縦断コーパス研究 石黒 圭 2022.4 -
日本語学習者の談話の縦断コーパス研究 石黒 圭 2022.4 -
日本語学習者の作文教育支援研究 山口 昌也 2022.4 -
定住外国人の談話の縦断研究 野山 広 2022.4 -
定住外国人のよみかき研究 福永 由佳 2022.4 -

概要

研究目的

今日本には、日本語を外国語として話す人がたくさん住んでいます。コンビニの店員やホテルのホテリエ、病院の看護師や介護施設の介護士、システムエンジニアやプログラマー、農業・漁業・建設業などの技能実習生、大学・専門学校で学ぶ留学生に至るまで職種も多様ですが、母語でない日本語をみんな上手に話します。こうした日本語非母語話者、いわゆる外国人は日本語をどのように学び、身につけたのでしょうか。私たちはそうした外国人の日本語の習得を研究するプロジェクトを推進しています。

日本語をどこで学び、身につけるかを考えた場合、大きくは二つに分かれます。一つは海外、もう一つは日本国内です。海外で学ぶ場合、もちろん独学で学ぶ日本語学習者もいますが、多くは教室の授業で日本語を学びます。大学はもちろん、中学や高校で日本語を学ぶ学習者も増えています。日本国内での英語教育を考えればわかるように、海外の日本語教育も同国人同士で母語を介して学ぶのが一般的です。海外で学ぶ場合、学ぶ対象は、JFL (Japanese as a foreign language)、外国語としての日本語です。

日本国内で学ぶ場合、留学生であれば、海外の日本語教育と同じように教室での日本語学習となりますが、教室は多国籍になり、教室の共通言語は母語ではなく日本語です。一方、留学生でない場合、派遣された日本語教師とマンツーマンで学ぶ場合もあるでしょうし、日本語ボランティアが教える地域の日本語教室で学ぶことも少なくありません。さらには、職場の日本人と何とかコミュニケーションを取っているうちに自然と身につく自然習得の場合もあるでしょう。日本国内で学ぶ場合、学ぶ対象は、JSL (Japanese as a second language)、第二言語としての日本語が対象です。

一口に日本語を習得すると言っても、JFL と JSL とでは、日本語を学ぶ環境も学ぶ方法も大きく異なります。私たちのプロジェクトでも、JFL と JSL の研究とでは異なるアプローチを用いています。

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研究計画・方法

日本語学習の研究で大事なのは学習者の成長過程です。初級、中級、上級の学習者を別々に研究しても成長過程はわかりません。一人の学習者が、初級、中級、上級と上達していく経年的な学習記録を追跡して初めて、成長過程は明らかになります。

JFL の研究として私たちは、「日本語学習者の作文の縦断コーパス研究」と「日本語学習者の談話の縦断コーパス研究」という二つのサブプロジェクトを用意しています。前者の作文研究では、中国、台湾、韓国、ベトナムの複数の大学と協力し、大学入学から卒業までの4年間、作文執筆調査を行います。後者の談話研究では、中国、ベトナム、タイの大学の日本語学習者を対象に、やはり大学4年間、I-JAS 準拠のインタビュー調査を行います。いずれも、調査結果を学習者コーパスの形で公開し、日本語教育の現場に役立てる応用的研究です。一方、作文研究に関連したサブプロジェクト「日本語学習者の作文教育支援研究」では、協同型の作文教育向けの作文・添削支援システムを開発し、システムを用いた授業実践から得られたデータを用い、作文技能の習得過程とシステムの教授効果を明らかにする研究です。

JSL の研究にも、二つのサブプロジェクトが存在します。一つは「定住外国人の談話の縦断研究」で、2007年から継続してきた東北地方における外国人定住者の縦断インタビュー調査のデータを公開し、分析することで、長期間にわたる生活者の言語習得の実態を明らかにします。もう一つは「定住外国人のよみかき研究」で、生活者としての日本語学習者を対象に、日常生活における文字を介したコミュニケーションの種類、方略の使用、新しいメディアの活用等についてデータ収集を行い、よみかき実践研究の発展とよみかきに関わる外国人支援の充実を目指します。

私たちは、経年的な学習データの収集と公開に力を注いでいます。時間と労力をかけて収集した長期にわたる学習記録には、日本語の学習や教育に貢献する貴重なヒントが隠されているのです。

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