多言語・多文化社会における言語問題に関する研究

プロジェクトリーダー
朝日 祥之 (国立国語研究所 准教授)
実施期間
2022年4月~

概要

研究目的

国や地域を超えた移動が国内外で生じています。それにより生じた社会変容により社会がより多様になっています。法務省「在留外国人統計」によれば、2019年12月時点で日本に住む外国人も約365万人 (「在留外国人統計」法務省) となりました。これは日本総人口の約3%を占めるようになりました。また、電子メールやソーシャルメディア、SNS に代表される情報通信手段の進展により、コミュニケーションのあり方にも大きな変容が生じています。近年ではマイノリティや障害者への再評価がなれ、社会の多様化が進んでいます。

このような状況で日々の言語生活に生じる言語問題も多様になっています。その範囲は単に外来語や敬語の問題にとどまるものではありません。例えば、ソーシャルメディア、外国人を親にもつ子供や LGBT、障害者、技能実習生を取り巻く言語をめぐる問題も多様になっています。より多様な社会に生活する上で、これらの問題の所在を突き止め、その解決に向けた研究が必要になります。また、これは単に社会言語学の問題でありません。社会学、文化人類学、歴史学、日本語教育学、行動計量学との連携が必要になっています。

本プロジェクトは、このような問題意識のもとで、多言語化・多文化社会における言語問題のうち、日々の言語生活に欠かせない分野である行政、医療福祉の分野で生じている言語問題 (言語選択、専門用語、外来語、読み書き能力等) を、専門家と非専門家双方に対する社会調査を通じて把握し、その解決を志向した研究をおこなっていきます。

研究計画・方法

行政・医療福祉の分野における言語問題に関する国立国語研究所のプロジェクトは「外来語言い換え提案」「病院の言葉」があります。この他にも大規模自然災害をきっかけとして提唱された「やさしい日本語」の研究があります。しかしながら、これらはそれぞれ「国語問題・国語施策」、「日本語問題・日本語施策」のための研究で、多言語化・多文化した日本社会の言語問題を包括的に捉えることにはなりません。

そこで本プロジェクトでは、国立国語研究所で実施された「国語・国字・日本人の視点」による言語生活研究の再定義を行い、行政・医療福の分野における言語問題の把握を目指します。先にあげた先行研究で得られた知見の経年変化を示しつつ、言語問題の解決に向けた研究を行います。

本プロジェクトでは、専門家を対象とした社会調査の企画・実施を行う「専門家調査班」、非専門家を対象とした調査 (日本人・外国人・ろう者等) の企画・実施を行う「言語生活調査班」、調査班間の連携を図り、プロジェクト全体の企画運営を行うための「総括班」を組織します。

専門家調査班では、主に調査会社によって実施される社会調査を企画・実施します。そこで得られた調査結果については、調査データを整備の上、速報版として公開していきます。また、公開された調査データを活用した研究発表会を企画する予定です。また、調査データについては日本語による発信だけではなく、調査で使用した言語で発信する計画です。

言語生活調査班では、社会調査班で企画される調査内容を踏まえつつ、言語コミュニケーション上の問題の所在を明らかするための調査を企画・実施します。言語生活調査班では、より質的でかつ実証的な調査を実施します。日本語学、社会言語学、社会学、文化人類学、行動計量学などの研究の連携を図りながら、調査研究を進めていきます。

なお、本プロジェクトは人間文化研究機構で推進されている日本関連在外資料調査研究、並びにコミュニケーション共生科学の創成と連携を図ります。

Language problems
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