実証的な理論・対照言語学の推進

プロジェクトリーダー
浅原 正幸 (国立国語研究所 教授)
実施期間
2022年4月~
サブプロジェクト
課題名 サブプロジェクトリーダー 実施期間
アノテーションデータを用いた実証的計算心理言語学 浅原 正幸 2022.4 -
日本・琉球語諸方言におけるイントネーションの多様性解明のための実証的研究 五十嵐 陽介 2022.4 -
計算言語学的手法による理論言語学の実証的な方法論の開拓 窪田 悠介 2022.4 -
体言化の実証的な言語類型論 ―理論・フィールドワーク・歴史・方言の観点から― プラシャント・パルデシ 2022.4 -
述語の意味と文法に関する実証的類型論 松本 曜 2022.4 -

概要

研究目的

言語学は、「言語のイントネーションのパターンにはどのような規則性があるか」「述語の意味は、どのような形で現実の事態を抽象的に反映しているか」などのような問題を通して人間の認知の構造の解明を目指す学問です。言語学は伝統的に文系の学問と位置づけられてきたため、現在までの研究においては、このような課題に取り組む際、個々の研究者の内省や直感に基づく個別研究が方法論の主流をなしてきました。一方で、海外の最先端の研究などでは、このような個人の内省ベースの個別的な研究のみに頼る方法論の限界も近年盛んに指摘されており、再現性を担保する仮説・検証型の研究手法を模索する試みが様々な形で始まっています。

本プロジェクトでは、上記の世界的な研究動向に鑑み、理論言語学・対照言語学のオープンサイエンス化を目標に掲げ、国内外における、再現性を担保する仮説・検証型の研究をリードすることを目指します。方法論の転換期には様々な試行錯誤が伴いますが、パラダイムシフトの背後にある必然的動機を見据え、また、国立の研究所という機関の性質を踏まえて、研究活動に付随する新たなインフラの積極的活用を推進する取り組みも行います。具体的には、1) プレプリント・サーバへの論文投稿の推奨など、研究の質を落とすことなく競争ベースの研究から協調ベースの研究に転換する方法の模索や、2) 研究データ共有や公開に関する指針 (研究データマネジメント) に関する知見の研究者コミュニティとの共有などに取り組みます。

研究計画・方法

具体的な研究テーマを立てて個別の課題に取り組むプロジェクト4件、イントネーションプロジェクト (リーダー : 五十嵐 陽介)、体言化プロジェクト (リーダー : プラシャント・パルデシ)、述語の意味文法 (リーダー : 松本 曜)、計算言語学プロジェクト (リーダー : 窪田 悠介) と、リソース開発に取り組むプロジェクト1件、アノテーションプロジェクト (リーダー : 浅原 正幸) を連動させる形で研究を進めます。個別の課題に取り組むプロジェクト4件は、それぞれ、冒頭で述べたような言語学の各分野における中心的課題に取り組み、新しい手法を用いて既存の研究の限界を乗り越えていく成果を出すことを目指します。

核心にある問いと採用する手法は、以下のように、それぞれのサブプロジェクトの性質に応じて多様な広がりを持っています。現時点では、以下のような体制で研究を開始することを予定しています。

  • イントネーションプロジェクトでは、コーパス構築とフィールド調査を用いてイントネーションの構造の言語間・方言間変異の解明に取り組む
  • 体言化プロジェクトでは、フィールド調査と文献資料調査を用いて、体言化・名詞修飾構造の形態・統語・意味的類型を研究する
  • 述語の意味文法プロジェクトでは、ビデオ実験とコーパス調査を用いて、状態変化述語の意味構造を分析する
  • 計算言語学プロジェクトでは、コーパス構築と計算論的モデリングを採用して、統語変換操作の理論的位置づけを考察する

このように、それぞれのサブプロジェクトは、対象とする言語学的な概念の性質に応じて、その概念の批判的検討の目的のために最適な、分野横断的手法を複数組み合わせた多角的なアプローチを模索します。どのような問いに対してどのようにアプローチするかには、それぞれのサブプロジェクトの独自性が反映されており、この多様性が、プロジェクト全体の特徴の一つとなっています。

これらの具体的な課題に取り組むサブプロジェクトと連動し、それを後方支援するアノテーションプロジェクトでは、既存のコーパスでは手薄だが、言語の科学的研究をより一層進めるために必要となるタイプの言語資源の構築に注力します。プロジェクト全体で開催する合同の研究会やサブプロジェクト間での共同研究や言語資源活用のノウハウの共有を通して、サブプロジェクト間の連携を強めて研究推進の相乗効果を得ることを模索します。


Theory and Typology
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