節連接へのモーダル的・発話行為的な制限
略称 | : | 五段階 |
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プロジェクトリーダー | : | 角田 太作 (つのだ たさく) 国立国語研究所 言語対照研究系 教授 |
実施期間 | : | 平成21年10月~平成24年3月 |
研究分野 | : | 言語学 |
キーワード | : | 節連接,五段階,モーダル,発話行為 |
概要
接続表現の用法は五段階に分類できる。日本語の接続表現「から」の例を見よう。
レベルI: | 雨が降ったから, 花子は家にいた。 | (原因 と 結果) |
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レベルII: | 雨が降ったから, 花子は家にいるかもしれない。 | (原因 と 結果・判断) |
レベルIII: | 雨が降ったから, 家にいなさい。 | (原因 と 結果・働きかけ) |
レベルIV: | (花子は天気がよいと,必ず外出するという文脈。) 花子が家にいるから,雨が降ったのかもしれない。 | |
レベルV: | ビールは冷蔵庫にあるよ。喉が渇いているようだから。 |
レベルIからレベルIIIまでは,「原因=>結果」の関係を表す。更に,レベルIIの結果は同時に判断も表す。レベルIIIの結果は同時に働きかけも表す。
しかし,レベルIVとレベルVでは,「原因=>結果」の関係を表わさない。レベルIVでは判断の根拠を表す。「花子が家にいることを根拠に判断すると,雨が降ったのかもしれない」という意味を表す。レベルVでは発話行為の前提を表す。「喉が渇いているようだということを前提にして,「ビールは冷蔵庫にあるよ。」と伝える発話行為を行う」という意味を表す。
「から」は原因・理由を表す。全てのレベルで使える。しかし,原因・理由を表す接続表現が全て,レベルIからレベルVまで使える訳ではない。たとえば,「ために」は主にレベルIでしか使えない。
このように,接続表現によって使えるレベルが異なる。
本プロジェクトでは,原因・理由,条件,逆説の三つの種類の接続表現を考察し,どのレベルで使えるか,使えないかを,検討する。
共同研究員 (所属)
平成24年3月時点の所属です。
- 家本 太郎
(京都大学) - 井上 優
(麗澤大学) - 梅谷 博之
(東京大学) - 遠藤 史
(和歌山大学) - 大角 翠
(東京女子大学) - 小野 秀樹
(東京大学) - 風間 伸次郎
(東京外国語大学) - 片桐 真澄
(岡山大学) - 加藤 昌彦
(大阪大学) - 河内 一博
(防衛大学校) - 北野 浩章
(愛知教育大学) - 金 廷珉
(慶一大学校) - 金 恩愛
(福岡県立大学) - 桐生 和幸
(美作大学) - 久保 智之
(九州大学) - 呉 人惠
(富山大学) - 児島 康宏
(東京外国語大学) - 小林 正人
(東京大学) - 坂本 文子
(外務省研修所) - 佐々木 冠
(札幌学院大学) - 笹間 史子
(大阪学院大学) - 塩谷 亨
(室蘭工業大学) - 下地 理則
(群馬県立女子大学) - 白井 聡子
(名古屋工業大学) - 沈 力
(同志社大学) - 高橋 清子
(神田外語大学) - 田口 善久
(千葉大学) - 千田 俊太郎
(熊本大学) - 角田 三枝
(立正大学) - 永井 忠孝
(青山学院大学) - Heiko NARROG
(東北大学) - 平野 尊識
(山口大学) - Anna BUGAEVA
(早稲田大学) - Andrej MALCHUKOV
(Max Planck Institute) - 宮地 朝子
(名古屋大学) - 八杉 佳穂
(国立民族学博物館) - 山田 久就
(小樽商科大学) - 米田 信子
(大阪大学) - 今村 泰也
(国立国語研究所) - Timothy J. VANCE
(国立国語研究所) - Prashant PARDESHI
(国立国語研究所) - John WHITMAN
(国立国語研究所)
研究目的
節連接の五段階における,原因・理由,条件,逆説の3種類の接続表現の使い分けを考察する。対象とする言語は北米,中米,大洋州,アジア,アフリカの諸言語,および英語の,約40の言語である。以下の項目について,検討する。
(1) どの接続表現がどのレベルで使えるか,使えないか。
(2) 原因・理由,条件,逆説の接続表現の使い分けは同じ傾向を示すか?異なる傾向を示すか?
(3) 話し言葉と書き言葉で,使える接続表現の種類は異なるか?
(4) 同じ接続表現でも,話し言葉と書き言葉では,使えるレベルが異なるか?
(5) 従属文,等位文,parataxis (文の並立) は,使えるレベルが異なるか?
研究計画・方法
本年度は共同研究発表会を5回行う。4月,6月,10月,12月,3月である。
メンバーは共同研究発表会で研究成果を発表する。更に,共同研究発表会での討論の成果をふまえて,論文を書き直す。
予算の許す範囲で,フィールドワークも行う。
参考文献
- 参考文献 [ PDF | 121KB ]