多文化共生社会における日本語教育研究 プロジェクトの詳細
研究目的
2006年の国際交流基金の調査では,世界の日本語学習者の数は298万人を超え,日本政府は2020年を目処に留学生30万人計画を発表,近年では看護・介護士の労働力を外国人に期待しており,日本社会の多言語化,多文化化がさらに進むことが見込まれる。
このような現状をふまえ,本プロジェクトでは,第二言語習得研究,対照言語学,社会言語学,心理言語学,コーパス言語学等の幅広い学問領域の連携により,多文化共生社会における第二言語としての日本語の教育・学習をめぐるさまざまな問題について,実証的な研究を行う。研究の成果および研究の過程で蓄積されたデータは,教育現場での活用も視野に入れて積極的に発信する。
研究計画・方法
本プロジェクトは,以下の5つのサブプロジェクトから構成される。各サブプロジェクトが独自に研究成果を発信することを重視しつつ,研究会を共同開催するなどして,サブプロジェクト相互の有機的な関連が保たれるようにする。
(1) 学習者の言語環境と日本語の習得過程に関する研究 迫田 久美子
A 「言語環境と日本語習得」班
共同研究員 : 白井 恭弘,岩立 志津夫,渋谷 勝己,南 雅彦,小柳 かおる 他
既存のあるいは新規に収集した日本語学習者の発話や作文のデータを資料として,外部の言語環境の異なる日本語学習者の習得過程の比較を行い,その類似点と相違点を明らかにする。
B 「言語転移と日本語習得」班
共同研究員 : 奥野 由紀子,田中 真理,タサニー・メーターピスィット 他
既存のあるいは新規に収集した日本語学習者の発話や作文のデータを資料として,母語の異なる日本語学習者の日本語習得過程の比較を行い,その類似点と相違点を明らかにする。
C 「学習者コーパス研究」班
共同研究員 : 山内 博之,野山 広 他
上記2班の研究方法を参考にしながら,日本語学習者の発話や作文のコーパスの内容と構造に関する研究を行い,既存の日本語学習者の発話や作文のデータの活用について検討する。
(2) 社会における相互行為としての「評価」研究 宇佐美 洋
共同研究員 : 森 篤嗣 他
「評価」を「社会における相互行為」と捉え直した上で,日本人と外国人との接触場面における「評価」の実態を多角的に捉えていく。
(3) 「生活のための日本語」の内容に関する研究 金田 智子
共同研究員 : 三井 はるみ,金 孝卿 他
定住型外国人の「生活のための日本語」を明確化・体系化し,その教育利用 (教材やテスト等のシラバスデザイン) を可能とする方法を検討する。
(4) 日本語の基本語彙に関する研究 島村 直己
共同研究員 : 佐藤 亮一,正保 勇 他
「日本語基礎語彙辞典―初級500語―」を改訂し,それに続く1500語を基本語として選定し,語彙辞典作成のための研究を行う。
(5) コミュニケーションのための言語と教育の研究 野田 尚史
共同研究員 : 桑原 陽子,村岡 貴子,門倉 正美,小室 リー 郁子,穴井 宰子 他
コミュニケーションを重視した日本語教育を行うための基礎研究として,日本語非母語話者が日本語で言語活動をするときにどんな技術を使っているのか,また,どんな点が難しいのかを明らかにする。
総括プロジェクトリーダー
迫田 久美子 (国立国語研究所 日本語教育研究・情報センター 教授)
共同研究員 (所属)
- 井上 優
(麗澤大学) - 岩立 志津夫
(日本女子大学) - 大関 浩美
(麗澤大学) - 奥野 由紀子
(首都大学東京) - 金田 智子
(学習院大学) - 家村 伸子
(広島修道大学) - 川崎 千枝見
(広島国際学院大学) - 小柳 かおる
(上智大学) - 渋谷 勝己
(大阪大学) - 白井 恭弘
(ケースウェスタンザーブ大学
/ 国立国語研究所客員) - 砂川 有里子
- 田中 真理
(名古屋外国語大学
/ 国立国語研究所客員) - 中石 ゆうこ
(広島市立大学) - 仁科 喜久子
(東京工業大学名誉教授) - 橋本 ゆかり
(横浜国立大学) - 南 雅彦
(サンフランシスコ州立大学
/ 国立国語研究所客員) - 峯 布由紀
(上智大学) - タサニー・メーターピスィット
(タマサート大学) - 山内 博之
(実践女子大学) - 野山 広
(国立国語研究所) - 福永 由佳
(国立国語研究所) - 横山 詔一
(国立国語研究所)