日本語の間接発話理解 : 第一言語,第二言語,人工知能における習得メカニズムの認知科学的比較研究
- プロジェクトリーダー
- 松井 智子 (東京学芸大学)
- 実施期間
- 2016年10月~2019年9月
概要
研究目的
近年世界的にも文脈理解を含めた言語コミュニケーション (語用論) の発達研究の必要性が高まり,本研究申請者を含む複数の研究者が国際的な学術誌に特集を組んでいます (Ifantidou & Matsui 2013;Matsui 2014)。また,それぞれの言語文化に特有なコミュニケーションスタイルに関する文化比較的発達研究の重要性も指摘されています (Fitneva & Matsui 2014)。このような国際的な研究動向を背景に,言語学のみでなく,心理学や認知科学を含む学際的な研究領域として方法論も確立しつつある今,間接発話理解の総合的な習得研究の機は熟したと言えるでしょう。さらに人工知能の研究が近年勢いを増しつつありますが,文脈理解に関しては未だ研究が進んでいません。そのような中,本プロジェクトでアイロニーや間接的表現の計算モデルの構築と検証が成功すれば,世界に先んじた研究として注目されるはずです。
研究計画・方法
会話の特徴は,2つ以上の意味にとれるあいまいな言葉や遠回しな言い方が頻繁に使われることです。話し手が伝えたかったことを理解するために,聞き手は文脈を用いて意味を絞る必要があります。本研究では文脈を用いて間接発話を解釈する能力がどのように習得されるのかについて,学習者の第一言語と第二言語,そして人工知能との比較をとおして明らかにします。以下の2点を研究の柱とし,その成果を文脈理解が困難な学習者を支える教育的指針に結びつけます。
- 2つ以上の意味解釈が可能である間接発話 (「アイロニー」「遠回しな言い方」など) の理解を実験的に検証することを通して,第一言語の間接発話理解力の習得メカニズムを明らかにします。さらに第二言語の間接発話を理解するために必要となる会話能力の特徴を第一言語との比較を通して検討し,その習得メカニズムを検証します。
- 人工知能におけるアイロニーや間接的表現の理解過程の計算モデルを構築し,計算モデルと人間における間接発話理解力の習得を比較検討します。