機関拠点型基幹研究プロジェクト
多様な言語資源に基づく総合的日本語研究の開拓
国語研が展開する共同研究は,1つの基幹研究プロジェクト「多様な言語資源に基づく総合的日本語研究の開拓」に包括されます。日本語の研究の深化に伴って狭く細分化された研究分野の壁を乗り越えて,日本語の研究を融合・総合化することと,英語中心のグローバル化世界において,日本語研究及び日本語そのものの国際的存在感を向上させることを目的として,国語研はこのプロジェクトを実施しています。
プロジェクトの目的
このプロジェクトは,全国及び諸外国の大学・研究機関との組織的な連携により,個別の大学では収集困難な規模の多種多様な日本語資料を収集・蓄積し,それらの創造的再構築により得られる電子化言語資源を大学及び研究者コミュニティの共同利用に供することで日本語研究の国際化を促進しようとするものです。同時に,それらの多様な言語資源を分析するにあたって,これまで細分化され相互連携が少なかった種々の研究領域を融合させることによって,新たな総合的日本語研究のモデルを開拓することをめざしています。
プロジェクトの研究成果は,国際出版を含む印刷出版物,コーパス・データベース等の電子成果物,専門家向け及び一般向けの多様な催し等,様々なメディアにより全国及び世界に発信されます。また,全国の大学に対して,新たに開拓する総合的研究モデルを教育プログラム化して提供することで,日本語学・言語学教育の機能強化に貢献するとともに,各種言語資源の包括的活用を可能にする検索システムの開発により共同利用の基盤を高度化することも目的の1つです。さらに,各地の消滅危機言語・方言の記録,保存を通じて,地方創生・地域活性化に貢献することも目標としています。
プロジェクトの体制
この機関拠点型基幹研究プロジェクトは,複数の大型共同研究プロジェクトと公募型共同研究プロジェクトから構成されます。それぞれの共同研究が,密接に連携することで,国語研の基幹研究を形作ります。
また,このプロジェクトは,国語研が所属する人間文化研究機構における,機関拠点型基幹研究プロジェクトの1つであり,そのうち国語研を拠点とするプロジェクトとして位置付けられています。それと同時に,人間文化研究機構が実施する広領域連携型・ネットワーク型の基幹研究とも相互に連携しながら,新たな研究領域の開拓をめざすものです。
基幹型
- 対照言語学の観点から見た日本語の音声と文法 (2016年4月~2022年3月)
- 統語・意味解析コーパスの開発と言語研究 (2016年4月~2022年3月)
- 日本の消滅危機言語・方言の記録とドキュメンテーションの作成 (2016年4月~2022年3月)
- 通時コーパスの構築と日本語史研究の新展開 (2016年4月~2022年3月)
- 大規模日常会話コーパスに基づく話し言葉の多角的研究 (2016年4月~2022年3月)
- 日本語学習者のコミュニケーションの多角的解明 (2016年4月~2022年3月)
領域指定型
- 日本語から生成文法理論へ : 統語理論と言語獲得 (2016年10月~2019年9月)
- 議会会議録を活用した日本語のスタイル変異研究 (2016年10月~2019年9月)
- 古文教育に資する,コーパスを用いた教材の開発と学習指導法の研究 (2016年10月~2019年9月)
- 会話における創発的参与構造の解明と類型化 (2016年10月~2019年9月)
- 「具体的な状況設定」から出発する日本語ライティング教材の開発 (2016年10月~2019年9月)
新領域創出型
- 語用論的推論に関する比較認知神経科学的研究 (2016年10月~2019年9月)
- all-words WSD システムの構築及び分類語彙表と岩波国語辞典の対応表作成への利用 (2016年10月~2018年3月)
- 日本語の間接発話理解 : 第一言語,第二言語,人工知能における習得メカニズムの認知科学的比較研究 (2016年10月~2019年9月)
- 現代語の意味の変化に対する計算的・統計力学的アプローチ (2019年4月~2022年3月)
- 多文化共生社会における日本語の言語的障壁の低減に関する研究 (2019年4月~2022年3月)
- 発達障害児の聞き取りの困難さの要因を探る実証研究 (2019年4月~2022年3月)
共同利用型
- NPCMJコーパスに対する日本語意味役割分析 (2019年4月~2020年3月)
- 音声の個人内変化を推定するためのコーホート分析の有効性に関する実証研究 (2019年4月~2022年3月)
- 訓点資料の精密解読によるデジタルアーカイブの検証 (2019年4月~2022年3月)
- 言語接触における英語のインパクト : 語彙の英語化に関するウェルフェア・リングイスティクスの視点から (2019年4月~2022年3月)
- 語彙使用・漢字使用に着目した児童の文章作成能力の経年変化の実態調査 (2019年4月~2020年3月)
- 第1~3次岡崎敬語調査調査票・調査員記録簿の分析 (2019年4月~2020年3月)
- 大規模コーパスを利用した言語処理の計算心理言語学的研究 (2019年4月~2022年3月)
- 東北方言の地理的・世代的動態についての研究 (2019年4月~2022年3月)
- 難解用語の言語問題に対応する言い換え提案の検証とその応用 (2019年4月~2022年3月)
- 日本語音声の韻律的特徴におけるポーズと話速の実証的研究 (2019年4月~2020年3月)
- 日本語研究の戦前と戦後 ―国立国語研究所草創期に関与した研究者を通して明らかにする日本語の研究史― (2019年4月~2021年3月)
- 北海道調査データを再活用した言語変化の実時間プロセスの解明へ向けた研究 (2019年4月~2022年3月)
- 感謝表現研究における「各地方言収集緊急調査」資料の活用 (2020年4月~2022年3月)
- 音声談話資料を利用した大分方言60年間の変化の研究 (2020年4月~2022年3月)
- 日本語の自然発話における卓立認知に関する研究 (2020年4月~2022年3月)
- 国研の蔵書から見た海外言語地理学・言語地図の歴史と現状の研究 (2020年4月~2022年3月)
- 第二言語学習における音声生成能力の向上が音声知覚能力に与える影響 (2020年4月~2022年3月)
- 国立国語研究所創設期の研究者のノートから辿る日本語研究の歴史 (2021年4月~)
- 方言音声と共通語音声の使い分けの変化に関する研究 (2021年4月~)
- 単語分散表現と文脈依存単語埋め込み表現を利用した語義の埋め込み表現の構築 (2021年4月~)
- 訓点資料構造化データの検証研究 (2021年4月~)
- 言語をめぐる社会調査史料の活用法に関する研究 (2021年4月~)
共同利用型 (登録型)
- 日本語の有声性の対立への複数の音響指標の影響 (2021年9月~2022年8月)
- 『現代語の助詞・助動詞』の電子化及び整理 (2021年10月~2022年3月)
- 和歌・今様を対象とする UniDic の開発と研究 (2021年11月~2022年10月)
- 「語の文体値データ」の作成及び公開 (2021年11月~2022年3月)
- 欧文脈の現代語文脈への定着過程 ―無生物主語を伴う「見る」の用法を例に― (2022年2月~)
共同利用型 (言語資源型)
- 指標性に着目した日本語記述 (2022年1月~)
- 係り受け情報を用いた日本語母語話者の情報処理過程解明のための基礎的研究 (2022年1月~)
- BCCWJ を用いた日本語統語情報・名詞コロケーション辞書作成のための基礎的研究 (2022年1月~)