会話における創発的参与構造の解明と類型化
- プロジェクトリーダー
- 遠藤 智子 (東京大学)
- 実施期間
- 2016年10月~2019年9月
概要
研究目的
本研究の目的は,多様な会話インタラクションのマルチモーダル分析を通じ,参与構造が会話の各局面でどのように立ち現れそして変わっていくのか (創発するのか) を明らかにすること,およびその中に見出されるパターンを整理し類型化することです。これらを通じ,個々の会話データを理解する際に注意すべきパラメータが何であるのかを明らかにします。
従来の会話を利用した言語研究や会話コーパスの構築においては,会話の参与者を「話し手」と「聞き手」として単純に捉えるモデルが採用されがちです。他方,GoffmanやClarkは「話し手」や「聞き手」に関してより詳しい分類をしましたが,理論的なモデル構築に主眼がおかれており,現実の場面における参与構造の多様性を捉えきれていません。それに対して本研究では,様々な種類の活動をデータとして分析し,ボトムアップ的なアプローチでモデル構築を行なうことで (1) 多様性を踏まえた参与構造モデルの提示,(2) 参与構造類型化のための枠組みの確立,(3) 参与構造が動的に構築されるプロセスの解明 という点に関して研究を進展させます。
研究計画・方法
本研究では,参与構造が極端に有標な特徴をもつ場面のデータを検討することで,参与の仕方に影響を与える要因を見えやすくし,それとの対比として日常会話のデータも検討します。具体的には,(a) 日常会話,(b) 宗教儀礼,(c) 教室場面,(d) 医療活動,(e) ミーティング・インタビュー等の各活動に関し (1) 活動の開始部分と (2) 活動の終了部分,および (3) 活動中間部に分け,参与構造の創発と交渉に関わる特徴をマルチモーダルに分析します。具体的には,発話内容はもちろん,身体配置・道具の使用・視線・うなづき・指差し・ジェスチャー・声量/声質・服装 (の変化) 等に注目し,さらに,他にもデータに観察される特徴をその都度分析対象として追加します。