対照言語学の観点から見た日本語の音声と文法
- 略称
- 対照言語学
- プロジェクトリーダー
- 窪薗 晴夫 (国立国語研究所 理論・対照研究領域 教授)
- 実施期間
- 2016年4月~2022年3月
- キーワード
- プロソディー,名詞修飾表現,とりたて表現
- 関連サイト
- プロジェクトのウェブサイト
概要
研究目的
日本語の研究は日本国内に長い伝統と優れた成果を有している一方で,他の言語と相対化させる努力が十分ではなく,(i) 世界諸言語の中で日本語がどのような言語なのか,(ii) 一般言語学・言語類型論の視点から見ると,日本語の分析にどのような知見が得られるのか,(iii) 日本語の研究が世界諸言語の研究や一般言語学・言語類型論にどのように貢献するのか,いまだ十分に明らかにされたとは言えません。現代の日本語研究に求められているのは,日本語の研究が世界諸言語の研究,とりわけ一般言語学や言語類型論研究にどのように貢献できるのかという「内から外を見る」視点と,一般言語学や言語類型論研究が日本語の分析にどのような知見をもたらすかという「外から内を見る」視点です。
本プロジェクトは,この2つの視点から日本語の言語事実を分析することにより,日本語 (諸方言を含む) を世界の諸言語と対照させて日本語の特質を明らかにし,それにより日本語研究の国際化を図ることを主たる目的としています。日本語の音声・音韻,語彙・形態,文法,意味の構造を,言語獲得 (第一言語獲得,第二言語習得) はもとより,言語に関係する他の学問分野 (心理学,認知科学他) との接点・連携をも視野に入れて,対照言語学・言語類型論の観点から分析することにより,諸言語間に見られる類似性 (普遍性) と相違点 (個別性・多様性) を明らかにしたいと思います。このような対照研究を通じて得られた研究成果を国内外に向けて発信します。
研究計画・方法
上記の目的を達成するために,本プロジェクトは音声・音韻特徴を分析する音声研究班と,形態・文法・意味構造を分析する文法研究班の2つの研究班 (サブプロジェクト) を組織します。音声研究班は「語のプロソディーと文のプロソディー」を主テーマに,文法研究班は「名詞修飾表現」「とりたて表現」「動詞の意味構造」の3つをテーマに研究を進めます。
音声研究班と文法研究班は研究成果発表会や出版物の編集などの日常的な活動をそれぞれ独自に行う一方で,「対照言語学の観点から日本語の特質を解明する」という共通の目標に向かって合同の研究成果発表会と国際シンポジウムを定期的に開催し,その成果を英文論文集などの成果刊行物として公刊する計画です。また,日本語や言語類型論に関する国際会議を合同で誘致し,プロジェクト全体で日本語研究と国語研のグローバル化を推し進めたいと思います。さらに国際シンポジウムや出版企画等が国際的に孤立した企画とならないよう,世界の研究をリードしている海外の研究者を共同研究員として迎え,その中核メンバーと国内の中核メンバーで Advisory Board を組織します。この Board を中心に諸企画の方針・方向を決定し,国際的研究ネットワークの構築を図りたいと思います。
音声研究班においては,プロソディー研究の対象に多くの危機方言が含まれています。プロソディーは危機言語・方言プロジェクトの研究対象にもなっているため,この部分を接点として危機言語・方言プロジェクトとの連携も図る計画です。文法研究班の中の名詞修飾表現研究グループは,統語・意味解析コーパスプロジェクトとの連携を図ります。