議会会議録を活用した日本語のスタイル変異研究

プロジェクトリーダー
二階堂 整 (福岡女学院大学)
実施期間
2016年10月~2019年9月

概要

研究目的

この研究は,これまでの日本語の方言研究や社会言語学的研究において,「フォーマル」または「カジュアル」のようにやや単純に場面への言語的反応としてとらえられてきた「スタイル」という概念を,言語への意識 (イデオロギー) や話題等に対する話者の心的態度や社会的立ち位置の表明 (スタンス取り) などにより生じる「言語変異の社会的意味」を考慮して,話者が自ら創り上げる言語的構造物であると仮定します。その上で,議会の委員会や本会議のいくつかの状況に生じるスタイル変異を考察することにより,日本語のスタイル研究に新たな発展をもたらすことができるのではないかと考えています。

また最近の海外のスタイル研究では,特に質的側面からの議論が盛んですが,この研究でも量的研究に加えて,待遇表現,ポライトネスなどの質的側面の研究からの知見も取り入れた考察を行い,より総合的・包括的に言語変異とスタイル構築の関連を明らかにしていくつもりです。

さらに,議会会議録資料を言語研究のためのデータベースとして整備することにより,言語学のみならず,政治学等の他分野を含め,議会会議録を利用した国内外の研究での新たな相互作用が期待できるものと考えています。

研究計画・方法

この研究は方言学,社会言語学,応用言語学の観点から,国会・地方議会会議録を資料として日本語のスタイル変異に関する分析を行い,新たな知見を提供することを目指します。議会会議録は普段のくだけた場の話し言葉とは異なりますが,様々な状況設定 (本会議・委員会での場面差,国会中継の傍聴者の存在等) があり,利用可能な議会の映像も含めて,比較検討することで,スタイル研究の言語的分析が可能となると考えています。この研究では,以下の2つを目標としています。

  1. 国会会議録に加えて,地方議会会議録の検索システムとデータベース化を検討し,言語学研究のための環境の整備をめざすこと。
  2. スタイルを,言語への意識や話者自身の心理的・社会的位置取りなどが関与して創り上げられる「話者がデザインするもの」としてとらえる海外の研究動向を踏まえた上で,異なる状況での話者の言語的変異の使用による日本語におけるスタイル構築の実態をとらえ,その特性の解明に向けて量的・質的両面から分析・考察すること。
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