消滅危機方言の調査・保存のための総合的研究 プロジェクトの詳細

研究目的

学術的目的

消滅の危機に瀕した方言 (沖縄の宮古方言・八重山方言・沖縄方言,鹿児島の奄美方言,東京の八丈方言など) の調査・記述・保存に関する研究を総合的に行う。これらの方言は,他の方言ではすでに失われてしまった,古代日本語が持つ特徴や,他の方言とは異なるシステムを有している場合が多く,歴史的観点からも,また一般言語学的観点からも注目される。本プロジェクトでは,このような特徴を含め,これらの方言の体系的な記述を行う。また,これらの方言では地域内の方言差が大きく,狭い地域に多様なバリエーションが共存している。このようなバリエーションの形成過程とバリエーションの持つ社会的機能の解明も本プロジェクトの目的の一つである。調査で得られたデータは,データベース化して保存するとともに,一般公開する。

共同利用目的

消滅危機方言の調査は緊急を要する。そのため,国内外の研究者を組織化し,研究者ネットワークを構築して,調査研究を効率的に進める。また,これまで,必ずしも統一的でなかった危機方言の記述方法に統一性を持たせるために,共同調査を実施し,研究者同士の共通理解を形成する。さらに,共同調査に若手研究者の参加を募り,フィールドワークを実施するなかで若手研究者の育成を行う。

応用目的

調査データをデータベース化し,保存すると同時に,一般に公開する。また,危機方言がもつ言語システムの面から,日本語の特徴や言語の一般的特性,言語習得の問題等を考え直す。

研究計画・方法

研究の土台となるのは,宮岡伯人を代表とする科研費特定領域研究「環太平洋の「危機に瀕した言語」に関する緊急調査研究」 (1999年度~2003年度) である。本プロジェクトの主要メンバーは,すでにこの特定領域研究に参加している。本研究では,さらに奄美・沖縄方言の調査研究に実績のある研究者をメンバーに加え,若手研究者を積極的に登用して,調査研究を進める。

調査研究は,(1)共同研究員が各自のフィールドで行う各地点調査,(2)共同研究員が一同に会して行う共同調査の2種類の方法をベースとして進める。各地点調査では,当該方言のテキスト,辞書,コーパスの3種類を作成することを基本的な目標とし,これに加えて,各地点の特徴的な現象について記述,考察する。共同調査では,調査地点の音声・文法・意味等に関する総合的な記述を行う。この作業の中で記述に関する研究者同士の共通理解を形成する。

役割分担 (木部は総てを総括)

  • 奄美方言 : 中島 由美 (一橋大学),松本 泰丈 (別府大学) ほか
  • 沖縄方言 : 狩俣 繁久 (琉球大学),Wayne LAWRENCE (オークランド大学) ほか
  • 宮古方言 : 田窪 行則 (京都大学 / 国立国語研究所客員),久保 智之 (九州大学),下地 理則 (九州大学) ほか
  • 八重山方言・与那国方言 : 金田 章宏 (千葉大学),狩俣 繁久 (琉球大学) ほか
  • 八丈方言 : 金田 章宏 (千葉大学),大西 拓一郎 (国立国語研究所),新田 哲夫 (金沢大学) ほか
  • アクセント : 松森 晶子 (日本女子大学),上野 善道 (東京大学) ほか
  • 方言の社会的機能 : Daniel LONG (首都大学東京) ほか

研究計画

  • 平成21年度 : 準備研究,研究報告会,共同調査打合せ
  • 平成22年度 : 各地点調査,合同調査 (奄美喜界島),研究報告会,国際フォーラム,公開講演会,調査報告書作成
  • 平成23年度 : 各地点調査,合同調査 (沖縄県宮古島),データベース化,公開講演会,公開シンポジウム,喜界島調査報告書の刊行
  • 平成24年度 : 各地点調査,共同調査 (奄美の予定),データベース化,公開講演会,公開シンポジウム,調査報告書作成
  • 平成25年度 : 各地点調査,共同調査 (沖縄の予定),データベース化,公開講演会,国際シンポジウム,調査報告書作成,研究成果を日本語で公刊
  • 平成26年度 : 各地点調査,共同調査 (沖縄の予定),データベース化,公開講演会,調査報告書作成,研究成果を英語で公刊

共同研究員 (所属)

  • 五十嵐 陽介
    (一橋大学)
  • 上野 善道
    (東京大学名誉教授)
  • 小川 晋史
    (熊本県立大学)
  • 荻野 千砂子
    (福岡教育大学)
  • 金田 章宏
    (千葉大学)
  • 狩俣 繁久
    (琉球大学)
  • 久保 智之
    (九州大学)
  • 久保薗 愛
    (愛知県立大学)
  • 小西 いずみ
    (広島大学)
  • 小林 隆
    (東北大学)
  • 佐々木 冠
    (札幌学院大学)
  • 重野 裕美
    (広島経済大学)
  • 下地 賀代子
    (沖縄国際大学)
  • 下地 理則
    (九州大学)
  • 田窪 行則
    (京都大学 / 国立国語研究所客員)
  • 竹田 晃子
  • Christopher DAVIS
    (琉球大学)
  • 中島 由美
    (一橋大学)
  • 仲原 穣
    (琉球大学)
  • 西岡 敏
    (沖縄国際大学)
  • 新田 哲夫
    (金沢大学)
  • 日高 水穂
    (関西大学)
  • Thomas PELLARD
    (フランス国立科学研究所)
  • 又吉 里美
    (岡山大学)
  • 町 博光
    (安田女子大学)
  • 松浦 年男
    (北星学園大学)
  • 松田 美香
    (別府大学)
  • 松本 泰丈
    (別府大学)
  • 松森 晶子
    (日本女子大学)
  • 山田 真寛
    (京都大学)
  • Wayne LAWRENCE
    (オークランド大学)
  • Daniel LONG
    (首都大学東京)
  • 井上 文子
    (国立国語研究所)
  • 大西 拓一郎
    (国立国語研究所)
  • 窪薗 晴夫
    (国立国語研究所)
  • 熊谷 康雄
    (国立国語研究所)
  • Anna BUGAEVA
    (国立国語研究所)
  • 三井 はるみ
    (国立国語研究所)
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