日本語レキシコンの音韻特性 プロジェクトの詳細
研究目的
本研究は促音とアクセントの2つの音韻現象を他の言語との比較を基調に分析し,世界の言語の中における現代日本語の特性を明らかにしようとするものである。いずれのテーマについても広領域の研究者に共同研究員として参画してもらうことにより,通言語的かつ学際的な研究を推進する。本研究は理論・構造研究系が推進する「日本語レキシコンの総合的研究」の一翼を担う一方で,時空間変異研究系が主導する「消滅危機方言プロジェクト」の調査を音韻論的に分析し,また言語対照研究系のプロジェクト研究を音声面から補完する役割を果たす。 促音の「っ」は日本語に特徴的な音声要素であるが,本研究は促音が頻出する外来語に着目して分析することにより,日本語話者が促音を産出・知覚するメカニズムを,音韻理論と音声実験を融合した実験音韻論の観点から解明する。本研究では促音を研究している広領域 (音声学,音韻論,国語史,言語獲得,日本語教育) の専門家を集め共同研究を推進する。
アクセントについては日本語を特徴づけているアクセント体系の多様性を通言語的視点から考察することにより, (i) 日本語諸方言のアクセント研究が一般言語学におけるアクセント研究,類型論研究にどのような知見を与えるか, (ii) 逆に一般言語学のアクセント研究が日本語のアクセント分析にどのような洞察を与えるかを明らかにする。
研究計画・方法
促音については関西を中心に行われている促音研究会と連携して活動を行う。国内外から5~10名の専門家を集めて共同研究を組織する。アクセントに関しては,東京外大学AA研において約10年間続いた全国規模の共同研究「音韻に関する通言語学的研究」 (研究代表者 : 梶茂樹氏) を後継する形で,上野善道氏,梶茂樹氏の協力を得て15~20名の組織で共同研究を推進する。
1~2ヶ月に一回開催される国内研究会と,年に1度,年度末に開催される国際シンポジウムを主な活動の場とする。定例研究会においては,若手研究者も含めた構成メンバーの研究発表に対し,専門が異なる参加者たちがそれぞれの視点からコメントを行う形をとる。国際シンポジウムは英語での発表を基本とし,発表の半数は国内研究会のメンバーが日頃の研究成果を発表する。残る半分は海外の共同研究員が海外における最新の研究成果を発表する形で行う。いずれの発表に対してもコメンテーターがコメントを行うこととするが,国内メンバーの発表に対しては海外の研究者が,海外研究者の発表に対しては国内メンバーがそれぞれコメントを行う。このような形式で国際シンポジウムを開催することにより,一方では日本国内における研究の成果を海外に発信し,他方では海外における最新の研究を日本の研究者に紹介することを図る。国際シンポジウムについては会議報告書を作成し,紙媒体と電子媒体 (ウェブ公開) で公表する。
促音,アクセントいずれの研究テーマについても,プロジェクトの最終年度においてはそれまでの研究を総括する形で研究論文集 (英文) を刊行する。
共同研究員 (所属)
- 李 連珠
(北海道大学) - 五十嵐 陽介
(一橋大学) - 伊藤 順子
(カリフォルニア大学サンタクルーズ校
/ 国立国語研究所客員) - 岩田 礼
(金沢大学) - 上野 善道
(東京大学名誉教授) - Donna M. ERICKSON
(上智大学) - 遠藤 光暁
(青山学院大学) - 大滝 靖司
(中央大学高校) - 小川 晋史
(熊本県立大学) - 梶 茂樹
(京都大学) - 加藤 宏明
(情報通信研究機構ユニバーサルコミュニケーション研究所) - 川越 いつえ
(京都産業大学) - 川原 繁人
(慶応義塾大学) - 姜 英淑
(松山大学) - 北原 真冬
(早稲田大学) - 儀利古 幹雄
(大阪大学) - 久保 智之
(九州大学) - 佐藤 (稲田) 久美子
(長崎外国語大学) - 三間 英樹
(神戸市外国語大学) - 新谷 敬人
(大妻女子大学) - 菅原 真理子
(同志社大学) - 高田 三枝子
(愛知学院大学) - 髙橋 康徳
(神戸大学) - 高山 知明
(金沢大学) - 瀧口 いずみ
(文京学院大学) - 竹安 大
(福岡大学) - 田嶋 圭一
(法政大学) - 田中 真一
(神戸大学) - 田中 伸一
(東京大学) - 那須 昭夫
(筑波大学) - 新田 哲夫
(金沢大学) - 早田 輝洋
- 平山 真奈美
(立命館大学) - PINTÉR Gábor
(神戸大学) - 福井 玲
(東京大学) - 松井 理直
(大阪保健医療大学) - 松浦 年男
(北星学園大学) - 松森 晶子
(日本女子大学) - 馬塚 れい子
(理化学研究所脳科学総合研究センター) - 三村 竜之
(室蘭工業大学) - Armin MESTER
(カリフォルニア大学サンタクルーズ校) - 米田 信子
(大阪大学) - 木部 暢子
(国立国語研究所) - Timothy J. VANCE
(国立国語研究所)