このプロジェクトは平成24年9月で終了しました。今後の更新予定はありません。
大規模方言データの多角的分析 プロジェクトの詳細
研究目的
国立国語研究所では,日本の方言研究の基盤的な資料である『日本言語地図』 (調査期間1957~1965,調査地点数2,400,調査項目数285) や「各地方言収集緊急調査」 (調査期間1977~1985,全国約200地点) の資料等の電子化・データベース化を進めてきた。これらは全国レベルの大規模な方言研究の資料であり,日本の方言研究における重要な資料である。本研究では,これらの資料・データや,既に電子データが公開されている『方言文法全国地図』等の利用も視野に入れ,計量的方言研究,言語地理学,日本語史,談話研究など専門を異にする共同研究員が,これらの大規模方言データを本格的に共同利用し,複数の視点から多角的に研究を実施する。大規模方言データの持つ可能性を十分に引き出す多角的な研究を通して,ことばの地域差の実態やその形成の解明に寄与する新たな知見の獲得,研究方法の開発,資料・データの整備・共有,公開や利用法の蓄積などを行う。
研究計画・方法
『日本言語地図』 (LAJ) はもともと印刷物であり,資料の全体的な取り扱いは容易ではなかった。『日本言語地図』データベース (LAJDB) は,言語地図のデータと調査の回答を記録した手書きの原カードの画像からなるデータベースで,LAJの利用環境を飛躍的に向上させる。このLAJDBを活用して,方言の分布の詳細な姿や,分布の形成,歴史などを明らかにしていく。具体的には,計量的な手法を用いた方言の分布パターン・類型,方言区画や伝播の模様などの詳細な解明,文献学的な方法による語の成立時期を付加したデータを用いた語の分布と歴史の研究,藩領図や近代道路図 (LAJ参考図) などの言語外的な情報のデータ化と語の分布との関係の分析などをはじめとして,LAJDBを活用した研究を進める。なお,LAJDBは,54万枚と推定される原カードのほぼ9割 (2009.9時点) が入力済。整備を進め,項目毎の点検校閲後,順次公開する。
「各地方言収集緊急調査」資料は,各県1地点については,『全国方言談話データベース』として刊行済で,さらに全体の1/3の資料の音声ファイルができている。他の電子化した談話資料も視野に,全国的な規模の方言談話資料のデータベースを活用した研究を進める。具体的には,表現法の使用実態と機能に焦点を当てた研究,終助詞などの表現法や談話におけるオノマトペの現れ方などの地域差の分析,談話資料と言語地図の情報を対比した分析などをはじめとして,談話における地域差を明らかにする研究を行う。
役割分担
- 熊谷 康雄 : 言語地図の計量的な分析,研究法の開発
- 井上 文子 : 全国規模の談話資料を利用した表現法の地域差の研究
- 大西 拓一郎 : 言語地図にGISを応用した研究
- 三井 はるみ : 方言談話資料による地域差の分析
- 小林 隆 : 言語地図と文献による総合的な日本語史研究
- 沖 裕子 : 全国規模の談話資料を利用した談話,言語行動の地域差の研究
- 沢木 幹栄 : 言語地図の資料性の分析,計量的研究
- 澤村 美幸 : 言語地図と文献による方言分布形成の研究
- 高橋 顕志 : 大量言語地図データによる言語接触の研究
- 日高 水穂 : 言語地図,談話資料の総合的利用による地域差の研究
3年間の研究期間を通して,大規模方言データベースを活用した研究の実践により,研究の可能性を多角的に掘り下げる。また,データ整備,追加情報作成,必要な場合の補充的調査等は,主として第1,2年次 (H21年度後半~H23年度前半) に行い,第3年次 (H23年度後半~H24年度前半) には研究成果をまとめ,公開シンポジウムを開催する。
共同研究員 (所属)
平成24年9月時点の所属です。
- 沖 裕子(信州大学)
- 小林 隆(東北大学)
- 沢木 幹栄(信州大学)
- 澤村 美幸(和歌山大学)
- 高橋 顕志(群馬県立女子大学)
- 日高 水穂(関西大学)
- 井上 文子(国立国語研究所)
- 大西 拓一郎(国立国語研究所)
- 三井 はるみ(国立国語研究所)