令和7年度 第2回
「危機言語の保存と日琉諸語のプロソディー」合同研究発表会

- 開催期日
- 2026年3月14日 (土) 8:50~18:00、15日 (日) 9:00~19:00
- 開催場所
- 対面とオンラインのどちらでも参加できる、ハイブリッド形式で開催
- 国立国語研究所 多目的室 (東京都立川市緑町10-2) 交通案内
- オンライン (Web会議サービスの「Zoom」を使用)
- 主催
- 国立国語研究所 共同研究プロジェクト 「消滅危機言語の保存研究」
- 国立国語研究所 共同研究プロジェクト 「実証的な理論・対照言語学の推進」
・サブプロジェクト 「日本語・琉球語諸方言におけるイントネーションの多様性解明のための実証的研究」
- 参加申し込み
参加を希望される方は、参加希望フォームにてお申し込みください。
いただいた個人情報は、個人情報保護ポリシーに則り厳正に取り扱います。- 参加費
- 無料
- キーワード
- 研究発表会・シンポジウム、オンライン開催、方言、音声、音韻、語彙、意味、文法
プログラム
- 8:50~9:00 オープニング
2026年3月14日 (土)
- 9:00~9:40
- 第5期の計画
- 山田 真寛 (国立国語研究所 准教授)
- 9:40~10:20
- 研究発表「琉球沖永良部語上平川 (ひょー) 方言の動詞の形態音韻論」
- エイデン・コールマン (国立国語研究所 非常勤研究員)
- 沖永良部島は、与論島と奄美群島の間に位置する北琉球諸島の一島である。近年、地元では「しまむに」と呼ばれる沖永良部の言語変種に関する言語復興と言語記録の活動が徐々に広がりつつある。沖永良部島では、字 (集落) ごとに言語学的な変異の度合いが大きく、またコミュニティの参加度も高いことから、近年は字単位で言語資料を作成する取り組みが進んでいる。本発表では、こうした背景を踏まえ、上平川 (ひょー) という字における音素体系と動詞形態論の分析を行い、さらに動詞の表層形を導く音韻規則についても検討する。「ひょーむにー」と呼ばれる上平川の言語変種を琉球諸語研究の一環として記述することで、今後のしまむにの言語復興および言語記録の活動を支えることを目的とする。
- 10:20~10:30 休憩
- 10:30~11:10
- 研究発表「鹿児島県南九州市頴娃町方言における 語幹末内破音の音韻解釈」
- スコットディクレメンテ・マルコ (九州大学大学院 博士後期課程)
- 本研究は、鹿児島県南九州市頴娃町方言の語幹末子音の音素解釈を再検討する。柴田 (1959) の/Q/分析や髙城 (2025) の形態音韻の立場では、頴娃方言の世代差や助詞付加時の交替を十分に説明できない。本方言では新旧二体系の証拠が併存し、単一基底では不十分であることを示し、世代・語末子音・助詞などの条件に応じて基底を選択する混成的記述を提案する。
さらに、複合語と動詞を検討した。名詞複合語は若年層でも古い形 (例 : [t͡ɕukkjo]「付き合い) を保持する傾向がある一方、新基底も名詞単独系を基にした類推のネットワークとして拡張している。動詞複合語は活用では古い体系を保つが、主題化構文 (例 : [asod͡ʑaseN]・[asobaseN]「遊びはしない」) では新基底にも転じ、中間的振る舞いを示す。これは、名詞と解釈されることによって新基底が反応するという品詞による差なのか、それとも形態素境界によるものなのかを検証する課題を提起する。
- 11:10~11:50
- 研究発表「津軽方言におけるモーラと音節についての再検討」
- モンソン・マックス (九州大学大学院 博士前期課程)
- 本発表では、日本語学において長く支持されてきた「モーラ言語」と「音節言語」を切り離して考える捉え方に、新たな視点から検討を加えます。津軽方言の音韻における様々な現象を分析することで、モーラ理論の枠組みを用いつつ、モーラと音節の双方が韻律階層の中でどのように関わり合っているのか、その構造の再構築を試みます。
- 11:50~12:30
- 研究発表「宮崎県椎葉村尾前方言の韻律について」
- 廣澤 尚之 (九州大学大学院 博士後期課程)
- 宮崎県椎葉村尾前方言の韻律体系を報告する。尾前方言は1つの語が複数のピッチパターンで実現可能であり、アクセント語類ごとの整理もできない無アクセント方言である。
本発表ではまず、尾前方言が無アクセントであることを、金田一語類を用いた調査によって確認する。 次にこの方言においてピッチパターンが完全に自由ではなく、統語上・情報構造上の環境に応じて一定の制約が課せられることを報告する。語は単独発話ではHL (下降調) またはLevel (平板) に実現する。更に、これらと組み合わされる句末H音調がある。
複数の語から成る構造体では、項では台形音調 (LH・・・HL) 、述語では山型音調 (LHL) が確認される。焦点は項では句末Hによって、述語では長距離上昇によって表される。
- 12:30~13:30 昼休み
- 13:30~14:10
- 研究発表「北陸諸方言における主格形式ア・ナの機能と成り立ち」
- 松倉 昂平 (金沢大学 講師)、米村 雪乃(東京外国語大学大学院 博士後期課程)
- 本発表では、北陸諸方言 (富山市、石川県七尾市、石川県白山市河原山、福井県三国町安島の4地点) における主語・目的語の格標示を概観し、特に主語を標示する形式として広く現れるア (発表者の調査によれば富山市ではナ) に注目しその分布・機能および通時的由来を整理・考察する。
本発表ではまず格体系の考察に先立ちアをめぐる形態音韻論を整理する。/kuma/+/-a/→/kuma/〈熊.NOM〉、/tori/+/-a/→/todda/または/tonda/〈鳥.NOM〉などやや複雑な形態音韻変化が一部方言で見られるためである (上例は安島方言) 。
すでに富山市方言 (小西2016) において指摘がある通り、ア (ナ) は情報構造にかかわらず用いられる主格形式の一つである (焦点内にある主語も主題主語もア・ナで標示し得る) 。ただし七尾・河原山・安島の3方言ではアの分布に主語の動作主性・有生性の高低が関与する (七尾では動作主性のみか) 。すなわち、動作主性 (・有生性) の高い主語はアによる有形標示を受けるが、動作主性 (・有生性) の低い主語はゼロ標示を選好あるいは許容する。アの由来は、主格助詞ガと主題助詞ワそれぞれに一部の音韻条件下で異形態アが生じたことに遡ると考えられる。安島方言はまさにその状態を今に維持しており、ガとワからアが生じる過程を見ることができる。
- 14:10~14:50
- 研究発表「富山方言の存在動詞についての初期報告」
- 髙城 隆一 (富山大学 講師)
- 富山方言の存在動詞 /or-/ と /ar-/ の使い分けについて初期調査の結果を報告する。日本語共通語をはじめとする日本語諸変種における存在動詞「いる」と「ある」あるいは「おる」と「ある」の使い分けは、基本的に主語の有生性によって説明される。すなわち、主語が人間か動物であれば「いる」あるいは「おる」が用いられ、主語が植物か無生物であれば (擬人化の例や、「運転手が乗っているタクシー」のような例を除くと) 「ある」が用いられるというものである。本発表では、富山方言においてこれとは異なる次の2つの観察がなされることを報告する : (i) 主語が植物や無生物であっても /or-/ の使用が可能である。 (ii) 主語が無生物の場合、 /or-/ を用いやすい場合と用いにくい場合がある (=無生物の中で差がある) 。
- 14:50~15:00 休憩
- 15:00~15:40
- 研究発表「沖縄語継承の現場にみる言語使用の多層性 ―小規模学習会における習熟度・談話活動・役割意識の相互作用」
- 安元 悠子 (沖縄国際大学 / 日本学術振興会 特別研究員 (PD))
- 本発表では、沖縄語の継承を目的とした小規模な学習会の映像記録を対象に、参加者間 (話者と学習者) の言語使用の実態を示す。分析では、言語の「習熟度」、読み上げや回想、雑談といった「談話活動」、および参加者の「役割意識」という三つの観点を設定する。 事例分析を通じ、場面や相手の理解度に応じて言語選択や説明の多寡が柔軟に調整される一方で、特定の語彙や発音の「正しさ」をめぐって特定の役割意識が喚起されるなど、複数の要因が相互に作用しながら談話が構成される様相を報告する。
- 15:40~16:20
- 研究発表「新島方言ドキュメンテーションのこれまでとこれから ―協働体制の構築に向けて」
- 西郷 太一 (総合研究大学院大学 博士後期課程)
- 本発表は、新島方言ドキュメンテーションに関して、地域内で行われてきた「これまで」の試みを振り返り、そこで浮かび上がった課題を整理したうえで、地域コミュニティと研究者の協働体制に基づく「これから」のあり方を展望することを目的とする。これまで新島では、新島村立博物館およびボランティアグループ「新島 式根島☆昔の暮らしとことば研究会」が、方言語彙集の作成や談話データの収集など、記録保存のための実践を主体的に積み重ねてきた。本発表では、こうした活動に携わってきた当事者への聞き取りに基づき、その成果と課題を整理する。
地域内での記録保存活動は、日常的関係性に基づくインフォーマントへの心理的負担の軽減や、調査滞在時間の制約がないことによる収集データ量の増大など、複数の側面からみて理想的な体制である。一方で、研究者を擁さない体制のもとでは、データの管理・公開・活用を見据えた長期的かつ効果的な活動体制の構築という点で、いくつかの課題が存在する。こうした状況を踏まえ、本発表では、地域が求める研究者の参与のあり方と、それを実現可能な形で組み込む研究体制の構築について検討する。
その具体的事例として、現在進行中の伝統環境知 (Traditional Ecological Knowledge: TEK) を中心に据えたドキュメンテーション・プロジェクトを紹介する。本プロジェクトは、談話データの収集を基盤としつつ、そこに内包される地域固有の暮らし・伝統・環境に関する知の体系を、コンテクストから切り離すことなく記録・保存する試みである。本プロジェクトでは、TEKの継承者である地域住民が中心となり、語彙の定義や注釈の付与、談話に関連する周辺情報の提供、高齢者への追加聞き取り、書き起こしへのフィードバックなどを担う体制を構築している。本事例は、地域コミュニティと研究者の協働体制の構築における継続可能かつ効果的な方法論を考える上で重要な価値を持つ。
- 16:20~16:30 休憩
- 16:30~18:00
- ワークショップ 「談話資料公開ワークショップ」
- 下地 理則 (九州大学 教授)
- このワークショップでは以下の3段階を順を追って、手を動かしながら学ぶ。まず、(1) フィールドで収集した談話データをELANで書き起こし、次に (2) それを言語ドキュメンテーションの「ちゃんとした」やり方で保存するとともに、最後に (3) 誰でも簡単に音声再生付き談話ギャラリーとして公開できる方法を学ぶ。その際、推奨のELAN設定を済ませたテンプレートを使い、こちらで用意したデモ音声をごく簡単に書き起こすことから始める。最後に、時間があれば、ELANの注釈のあり方として、今後日琉諸語研究で共有したい「注釈スタンダード」を提案する。それは、(a) text, (b) morph, (c) gloss, (d) pos, (e) transの5つの注釈情報である。(a) は音韻表記 (あるいは仮名) の文、(b) はその形態素分割、(c) は形態素単位のグロス、(d) は品詞、(e) は全文訳である。このうち、現状ではほとんど関心を持たれていないものの、特に今後極めて重要になっていく可能性がある (d) の重要性について、実際にそれを活用した研究を紹介しながら議論する。
- 9:00~9:40
- 研究発表「個別語彙の航跡に映る琉球諸語史の像」
- 尹 熙洙 (総合研究大学院大学 博士後期課程)
- 本発表は、文献記録または比較再建などによってその変化の歴史が詳細に解明できる語を取り上げ、それら既知の変化から観察される原理 (音変化の法則など) を一般化することによって、琉球諸語について歴史言語学的に考察できる範囲を広げる試みを目的とするものである。特に、方言間・言語間の借用や、散発的とみなされる音変化などといった、今まで形式化されなかった個別語彙の変化を判別・追跡すること、そしてそこから導き出される示唆に焦点を当てる。また、言語データの収集において「新たな現象を発見できる可能性」を考慮する必要性についても論じる
2026年3月15日 (日)
- 9:40~10:20
- 共同発表「南琉球諸語における多良間方言の位置づけ」
- 下地 賀代子 (沖縄国際大学 教授)、セリック・ケナン (国立国語研究所 特任助教)
- 多良間方言の系統的位置付けには諸説ある。古くから宮古語に下位分類され (与儀1934、崎山1962、平山ほか1967、中本1984、上村1997など) 、また2000年代以降も、ローレンス2003やPellard2009、セリック2007によって、多良間方言が宮古諸方言が複数の改新を共有していることが示されている。一方、狩俣 1997、かりまた 2000は、多良間方言が⼋重⼭語の下位に分類されることを主張している。
このような位置付けの「揺れ」は、多良間方言が他の宮古諸方言には見られない言語的特徴を有し、そのいくつかが八重山諸方言の特徴と同じであることによる。本発表ではまず、語彙の系統と文法の観点から多良間方言と宮古諸方言の"共時的"な相違とその程度について示す。また、系統論的にも多良間方言が宮古語に分類されることを再確認する。その上で、多良間方言は、宮古・八重山という⼤きな文化圏 (言語圏) の中でそれぞれとの共通性を保ちながら変化、発達し、独自の姿になった言語であることを主張する。
- 10:20~11:00
- 研究発表「⼋重⼭諸島の韻律体系と⾳節構造の変化について」
- 松森 晶子 (日本女子大学 名誉教授)
- 八重山諸島では現在、複合語のアクセントに着目することを発端に、「三型体系」が相次いで発見されている。それらの体系では韻律体系の大幅な組み換えが、まさに今、進行中の段階にあると言ってよい。次の研究テーマは、それらの体系が、それぞれどのような音調変化を経ることによって現在のような姿になったかについて、検討・考察することである。本発表では、八重山諸方言を通じて、各体系の組み換えには HLH のような重起伏音調のもたらした変化が関わっていることを、白保 (と波照間島) 、小浜島、黒島などのデータをもとにして論じる。そして (もし時間があればだが) 石垣、登野城など (の祖体系) に生じた語の第一音節の長音化にも、この重起伏音調が関与していることを、あわせて提案したい。
- 11:00~11:10 休憩
- 11:10~11:50
- 研究発表「岡山方言の文末表現の長母音化についてー岡山県玉野市の方言を中心に」
- 田窪 行則 (国立国語研究所 名誉教授)
- 本発表では日本語岡山玉野方言の文末表現を語末の母音の長短の交替という観点から記述する。
- 文末表現として主として主文にしか現れない動詞活用形、助動詞 (特に不変化助動詞) 、および終助詞を取り上げる。
- 語末が長母音となる動詞活用形のうち終助詞との融合と考えられるものを取り上げ、その根拠を示す。
- 語末が長母音となる動詞活用形のうち意向形 (j)oo, 否定意向形maaを取り上げ、その分布と機能を記述した。
意向形 (j)oo・否定意向形maaには話し手の推量と意向の用法がある。推量用法では終助詞がつき、keredoなどの従属節内にはいることができる。
これにたいし、意向用法となるときは真偽質問もできず、終助詞がつかず、keredoなどの従属節内にはいれない。
これらの動詞活用形は短母音化することがあり、その場合は推量の解釈はできない。 - 終助詞のうち短母音が長母音化するもの、長母音が短母音化するものを取り上げ、その機能の違いを見る。
- これらの短母音化、長母音化の談話管理的な機能を考察する。
- 11:50~12:30
- 研究発表「静岡市北部・井川方言における可能表現」
- 谷口 ジョイ (静岡理工科大学 教授)
- 静岡県の最北部に位置する井川地域 (旧安倍郡井川村) で話される井川方言は、中部地方の他方言とは異なる特徴も多く、かつて「言語の島」と呼ばれていた。本発表は、井川方言における可能表現について検討するものである。井川方言には、可能を表すものとして、①「読める」「読まれる」「読まられる」のような -(r)eru, -(r)areru ②「読みんえーる」のような -ɴeeru ③「読まさる (読まーさる) 」「読まささる」「読まらさる」のような -(sa)saru, -(ra)asaru という3つの形式がある。しかし、これらの使い分けについては不明な点が多い。
本研究では、日常会話でほとんど聞かれなくなった ③ の -saru形式について、13名の話者 (1935年〜1953年生まれ) を対象に、その使用・理解について調査した【調査1】。また、1名の話者 (1937年生まれ) に共通語から井川方言への翻訳タスクを依頼し、どのような形式が用いられるか記述した【調査2】。
調査1から、-saru形式は、対象の状態 (状況) 変化に伴う可能性を表す文脈でより自然に使用されることが示唆された。また、調査2の結果から、井川方言における可能表現は、その意味機能に応じて、複数の形式が使い分けられていることが示された。
- 12:30~13:30 昼休み
- 13:30~14:10
- 研究発表「奄美大島湯湾方言のアクセントの拍と音節の役割を定量的に検証する」
- 新永 悠人 (弘前大学 准教授)
- 従来の聴覚印象に基づく記述によれば、奄美大島の湯湾方言のアクセントは3つのアクセント型 (Ⅰ型・Ⅱ型・Ⅲ型) が区別される。具体的には、Ⅰ型は文節の最後の拍が低くなり、Ⅱ型は文節頭から2拍目を含む音節の直後で下降し、Ⅲ型は文節の最後の拍が高くなる。すなわち、湯湾方言のアクセントの記述には拍と音節という2つの単位が必要となる。
そこで、本稿では当該音声のF0と持続時間に注目し、湯湾方言において拍と音節という2つの単位が持つ役割を定量的に検証する。
結論として、湯湾方言のアクセントの分析において音韻的な役割を持つのは拍のみであり、音節は音韻的な役割を担わないことを示す。
- 14:10~14:50
- 研究発表「南琉球語・八重山地方に見られる視点移動型の指示詞体系」
- 荻野 千砂子 (福岡教育大学 教授)
- 本土共通語の指示詞は、コ系 (コレ、ココ類) 、ソ系 (ソレ、ソコ類) 、ア系 (アレ、アソコ類) の三系統があり、コ系は近称、ソ系は中称、ア系は遠称であると説明される。琉球語の指示詞も三系統あるため、ク系 (クリ、クマ類) は近称、ウ系 (ウリ、ウマ類) は中称、カ/ア系 (カリ、カマ/アリ、アマ類) は遠称であると記述されることが多い。確かに、八重山地方のカ系は遠称の用法を持つが、出発点が一人称の話し手に固定されない。そのため、一番目に指示した物や場所に、話し手の視点を移動させることができ、そこ (=一番目の物や場所) から「離れた物や場所」をカ系が指せることを説明する。このような体系を「視点移動型の指示詞体系」と呼ぶことを提案する。
- 14:50~15:00 休憩
- 15:00~15:40
- 研究発表「日琉諸語の手法を表す指示語の形成」
- カルリノ・サルバトーレ (大東文化大学 助教)
- 本発表では、日琉諸語における手法指示語の形成について述べる。日本本土諸方言では、「こう/そう/ああ」のように、他の指示語 (これ/それ/あれなど) と同様に3項対立が見られ、共通の指示語根に基づく体系が形成されている。一方、琉球諸語の多くの方言では、指示語体系全体が3項対立であっても、手法指示語のみが2項対立となる場合が多く、さらに他の指示語とは異なる語根が用いられている。例えば、沖縄語首里方言では kuri/uri/ari 「これ・それ・あれ」に対し、kan/an 「こう・そう / ああ」が対応する。南琉球でも、例えば宮古語久松方言ではkuri/uri/kari「これ/それ/あれ」に対し、kan/an「こう・そう/ああ」が対応する。しかし、沖縄語伊平屋方言のように、手法指示語においても他の指示語と同一の語根が用いられ、対立数も一致する体系も見られる (uri/ari 「これ・それ/あれ」、untu/antu 「こう・そう / ああ」) 。本発表では、これらの多様なパターンを概観し、その形成過程について検討する。
- 15:40~16:00 休憩
- 16:00~19:00 ディスカッション