八戸市フィールドワーク
フィールドワークの概要
国立国語研究所「日本の消滅危機言語・方言」プロジェクトと人間文化研究機構広領域連携型プロジェクト「方言の記録と継承による地域文化の再構築」では,2019年8月27日・28日に青森県八戸市で調査をおこないました。
国立国語研究所では,消滅の危機に瀕した言語・方言の記録を作成するために,これまでも鹿児島県喜界島,同与論島,沖縄県久米島,東京都八丈島などでフィールドワークをおこなってきました。2014年度からは日本本土方言の調査を進めており,これまで島根県出雲市 (2014年度),隠岐の島 (2015年度・2016年度),愛知県一宮市 (旧木曽川町) (2017年度),青森県むつ市 (2018年度) などで調査をおこないました。
また,例年と同様に,今回の調査でも若手研究者の育成をおこないました。まず,今後の方言研究を担うフィールドワーカーを公募し,選考を経た8名の大学院生と社会人を調査に帯同しました。調査の経験がない学生が大半であったため,言語調査に関する事前研修もあわせておこないました。
事前研修 (言語調査についてのレクチャー+実習)
国立国語研究所「日本の消滅危機言語・方言」プロジェクトと人間文化研究機構広領域連携型プロジェクト「方言の記録と継承による地域文化の再構築」では,東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所のLingDy3プロジェクトと共同で,2019年8月19日 (月) に八戸方言合同調査事前研修をおこないました。
受講生は8名で,いずれも公募によって集められた学生および社会人でした。講師は青井隼人 (東京外国語大学 アジア・アフリカ言語文化研究所 特任研究員 / 国立国語研究所 特任助教),山越康裕 (東京外国語大学 アジア・アフリカ言語文化研究所 准教授),木部暢子 (国立国語研究所 教授) で,次のような授業をおこないました。
1限目 (9:00~10:30)
青井 隼人 (東京外国語大学 アジア・アフリカ言語文化研究所 特任研究員 / 国立国語研究所 特任助教)
- 言語 (音声) 学的調査の方法論
- 録音技法
- 聞き取りと書き取りのポイント
- 音響分析の有効性
- 音素分析の初歩
2限目 (10:40~12:10)
山越 康裕 (東京外国語大学 アジア・アフリカ言語文化研究所 准教授)
- 話者から得られるデータの「正しさ」
- 言語学における「データ」=用例
- フィールド言語学の目的
- データの収集とその「正しさ」
- データの下降における悩ましさ
3限目 (13:30~15:00)
木部 暢子 (国立国語研究所 教授)
- 東北方言の音韻・音声の特徴とその書き起こし方法について
フィールドワーク
8月27日・28日にフィールドワークをおこないました。両日合わせて計6名の方にご協力いただきました。
調査項目 : 基礎語彙,文法項目 (格,情報構造,疑問詞,文タイプ,テンス・アスペクト,ヴォイス,形容表現,名詞述語)
調査結果は2020年度に公開する予定です。