このプロジェクトは平成26年9月で終了しました。今後の更新予定はありません。
学習者コーパスから見た日本語習得の難易度に基づく語彙・文法シラバスの構築 プロジェクトの詳細
研究目的
現在の日本語教育における文法シラバスでは,初級で助詞や活用などの日本語の基本的な文型に関わる要素をひと通り教え,中級以降では複合辞や機能語を教えるという文法観があると言われている。この文法観の影響が大きいのは,現時点でもっとも普及している『みんなの日本語』 (スリーエーネットワーク) や,世界で50万人以上が受験する日本語能力検定試験の文法観でもあるからである。ただ,この文法観は必ずしも客観的なデータに基づいて導かれたものとは言えないのが実情である。また,一部の研究者からは,受身形などは初級の文法項目では難しすぎるという批判も出ている。データの整備が進み,比較的に規模の大きい学習者コーパスが利用できるようになったいま,学習者コーパスから見た日本語習得の難易度に基づく語彙・文法シラバスを構築する意義は大きい。さらには,BCCWJ など日本語母語話者コーパスも援用して,日本語母語話者の使用実態も考慮に入れた語彙・文法シラバスの構築を目指す。
研究計画・方法
3年間,4年度に渡る研究期間において,日本語教育のための語彙シラバス及び文法シラバスについて,まとまった提案をすることを目的とする。プロジェクトリーダーは全体の総括を担当するだけでなく,研究内容についても中心的な役割を果たす。文法シラバスについては庵,語彙シラバスについては森をサブリーダー相当の担当者とし,研究内容の分担・策定・総括を担当する。岩田は現在の初級文法観がどのように形成されたかという日本語教育文法史の整理を担当し,文法シラバスの策定にも関わる。また,語彙や文法といった言語学的要素にばかり偏らないようにするため,日本語教育方法論 (渡部),学習ビリーフ (阿部),学習ストラテジー (栁田) がそれぞれの観点から研究を進める。中俣は文法シラバスを中心に研究を進めると共に,本共同研究プロジェクトの事務も担当する。
プロジェクトリーダーは,既に文法については『プロフィシェンシーから見た日本語教育文法』 (ひつじ書房),語彙については『日本語教育スタンダード試案 語彙』 (ひつじ書房) で,学習者コーパス (KYコーパス) に基づいた一つの提案をしているが,共同研究により具体的なシラバスの構築を目指す。
また共同研究員である庵・森は,日本語文法学会第11回大会で「日本語教育文法研究のための多様なアプローチ」,2011年度日本語教育学会春季大会で「教育と文法をつなぐ方法論」と,それぞれパネルセッションを実施しており,これらの成果に基づく論文集も近刊予定である。
上記の研究に共通するのは,学習者コーパスをはじめとしたデータに基づく語彙・文法シラバスの研究である。こうした共同研究体制を確立するために,本共同研究員組織を中心として,「データに基づいた日本語教育のための語彙・文法研究会」 (代表 : 山内博之,2011年7月現在会員28名) を設立し,2011年7月30日には第1回研究会を実践女子大学で実施した。本共同研究は,この研究会と連動して進める。
本共同研究ならびにデータに基づいた日本語教育のための語彙・文法研究会による成果は,学会誌への投稿もしくは論文集として刊行することにより,広く知らしめることを目的とする。
共同研究員 (所属)
平成26年9月時点の所属です。
- 阿部 新
(名古屋外国語大学) - 庵 功雄
(一橋大学) - 石黒 圭
(一橋大学) - 岩田 一成
(広島市立大学) - 内丸 裕佳子
(岡山大学) - 太田 陽子
span>(相模女子大学) - 奥野 由紀子
(首都大学東京) - 何 志明
(香港中文大学) - カノックワン・ラオハブラナキット・片桐
(チュラーロンコーン大学) - 高 恩淑
(一橋大学) - 澤田 浩子
(筑波大学) - 末繁 美和
(北見工業大学) - 建石 始
(神戸女学院大学) - 俵山 雄司
(群馬大学) - Asadayuth CHUSRI
(チュラーロンコーン大学) - 堤 良一
(岡山大学) - 中石 ゆうこ
(広島大学) - 中俣 尚己
(京都教育大学) - 永井 涼子
(山口大学) - 西川 寛之
(明海大学) - 橋本 直幸
(福岡女子大学) - 長谷川 哲子
(関西学院大学) - 福嶋 健伸
(実践女子大学) - 松田 真希子
(金沢大学) - 宮永 愛子
(金沢大学) - 茂木 俊伸
(熊本大学) - 森 篤嗣
(帝塚山大学) - 栁田 直美
(一橋大学) - 劉 志偉
(首都大学東京) - 渡部 倫子
(広島大学) - 小西 円
(国立国語研究所) - 迫田 久美子
(国立国語研究所) - 丸山 岳彦
(国立国語研究所)