このプロジェクトは平成25年10月で終了しました。今後の更新予定はありません。
言語の普遍性及び多様性を司る生得的制約 : 日本語獲得に基づく実証的研究 プロジェクトの詳細
研究目的
日本語獲得に関しては,過去に優れた記述的研究が行われているが,その多くは,理論的研究の成果に基づいたものではないため,言語獲得機構がもたらす言語の普遍性に対し新たな知見を与える成果が限られている。また,上記に掲げた研究課題 (たとえば格,複合名詞句構造,移動規則,削除) は,これまでの研究においては個別に扱われ,それらの獲得段階にみられる関係についての考察や分析はほとんど行われていない。本研究は,日本語に関する理論研究の成果を詳細に検討し,それを踏まえ,文法の普遍的属性を反映していると思われる現象の獲得過程を横断的かつ実証的に分析することを主な目的とする。さらに,日本語を母語とする幼児1名 (1歳~3歳) の新たな縦断的発話コーパスの構築も行い,記述的な側面での貢献も目指す。本研究の主な意義は,以下の3点である。①日本語に関する理論研究を踏まえた実証的研究を行うことにより,これまで明らかにされていない現象の獲得過程を明らかにし,言語獲得理論の構築に寄与する。②日本語に関する理論研究を獲得の観点から考察することにより,言語理論研究に対して示唆を与える。③広く知られている幼児の誤用 (格の誤用,自動詞と他動詞・使役動詞の代替誤用,複合名詞句内の「の」の過剰生成等) に対し,理論的研究の成果に基づいた新たな示唆を与える。
研究計画・方法
村杉・岸本・杉崎・齋藤・高橋の5名で,日本語に関する理論的研究の成果を整理する。それに基づき,杉崎は主に心理実験を用いた横断的な日本語獲得研究を計画・実施する。村杉は,院生アルバイトとして南山大学大学院人間文化研究科博士後期課程在籍の村井 (中谷) を中心とし,他に樫谷,木戸の二名の院生を加え,新たな縦断的発話コーパスの構築を行いつつ,それを用いた縦断的な日本語獲得研究を計画・実施する。また,村杉は,得られた成果を整理・統合し,従来個別に扱われてきた現象を横断的に分析し,岸本・齋藤・高橋とともに理論研究との関連を検討し,研究から得られた周辺分野への意義についてまとめる。
平成23年4月~平成24年3月
- 発話コーパスの構築を開始する。 (村杉,南山大学院生 村井 (中谷),南山大学院生 木戸)
- 日本語の移動および削除現象に関する心理実験を計画・実施する。 (杉崎,南山大学院生 樫谷)
- 削除現象に関する言語習得可能性 (learnability) について検討する。 (村杉,高橋,齋藤)
- 理論的背景をもとに日本語の自然発話分析に基づいた格および複合名詞句の研究を計画・実施する。 (村杉,岸本,齋藤,南山大学院生 村井 (中谷) )
- 年度内に研究打ち合わせを2回,公開ワークショップを1回行う。
共同研究員 (所属)
平成25年10月時点の所属です。
- 岸本 秀樹
(神戸大学 / 国立国語研究所) - 斎藤 衛
(南山大学) - 杉崎 鉱司
(三重大学) - 高野 祐二
(金城学院大学) - 高橋 大厚
(東北大学) - 瀧田 健介
(三重大学) - 多田 浩章
(福岡大学) - 藤井 友比呂
(横浜国立大学) - 宮本 陽一
(大阪大学) - 窪薗 晴夫
(国立国語研究所)